スポーツ発熱地図
『スポーツ発熱地図』藤島大著、大森裕二装丁、ポプラ社、01/2005

旅行記が好きである。一ヶ所に腰をすえて、住んでいるみたいに書いてあるのもいいけれど、あちらこちらの町をふらっと訪ねて、みたいなのも気軽でいい。すぐ読めるし。

と思ったけど、時間かかった。

一つの町につき10ページ弱の、日本列島縦断記。テーマは郷土とスポーツ。テレビと新聞に情報を頼っていると(これまでスポーツとは無縁の生活を送ってきたこともあってなおさら)、金とマーケティング以外の要素は目に入らなくなってしまう。「やせるためにジムに行かなきゃ」とか、「サッカーの名門校に入れるためにお受験させた」とか、自分の周りで聞こえるのはそういう話。

短絡的に考えていたのは「スポーツで町おこし」。でも、書いてあったのは「地域がスポーツを育てる」。最初に人間がいる。情熱がスポーツを地域に根付かせる。能都町のソフトテニス常呂町カーリング気仙沼のフェンシング。野沢温泉のスキー。旭川ばんえい競馬。サッカーや野球、ラグビーの町も登場するけれど、地元でしか見られない風景を書いているのは同じだ。

独特のごつごつした文体が最初は読みづらかった。ちょん切れるし、ときどき意味がわからないし。でも慣れた。愛やら汗やら涙やらでページが重い。地元の酒場も毎回登場。

たとえ飛行機で飛んだとしても、長い距離を移動すれば体が疲れる。読み終えた後、ただ読んだだけなのに、ちゃんと一緒に移動したような気になった。