読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド
『読むのが怖い!2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』北上次郎/大森望著、田中力哉(装丁・デザイン)、金英心(デザイン)、柳憲一郎(編集)、星真穂/橋中佐和/洪弘基(編集協力)、ロッキング・オン、03/2005

世代間で抗争が起こらないとしたら、漫才になっちゃうってこと?ってのは冗談だけど、とにかくおかしい。この二人の書評対談。編集のゴチックの入れ方も絶妙。

北上次郎、ミステリー評論家。1946年生まれ。「本の雑誌」の元発行人であるらしい。なんか、本をたくさん読む人なのね。なんだけど、甚だしく忘れている。ミステリのトリックなんか覚えてないし、あらすじも、自分がお書きになった本の解説すら覚えていない。レッド・ツェッペリンは知らないし。魔女や魔法が出てくるのは基本的にダメ。ご本人は認めていないけれど「自分の人生と引き比べて思いをいたす」お方。

で、1961年生まれの大森望に「批判してごらんよ」なんて挑戦してみたりするんだけど、大森さんは全然挑戦されてくれない。北上さんが思い入れのある本についていくら熱弁をふるっても、「まあ、はっきり言うと、この人の人生に興味がないんですよ」とか言われて終わりである。悲しい北上さんは「あのねえ、君の説明聞くと、すごくつまんなそうに聞こえるのね」「涙のない男だな、おまえは」「そう言いながら、君の唇が歪んでるのが気になるんだ俺は」と遠吠えをする。

正直、北上さんが薦める本をそんなに読みたいとは思わないけれど、「違いのわからない奴」と言われ続けてきた人間としては、北上さんに同情することしきり。わかってる若い人から「この人がわかるのはこの程度までかな」と実験台にしてもらおうと思ったら、「知らない、わからない」っていう正直さと「愛嬌」が必要なのねえ。もし「わかってる人」同士だったら、大森さんの説明能力も、ここまでは発揮されなかったでしょう。

低脳と呼ばれてもいい。大森さんにびしばし解説を受けたいものである。近刊『現代SF1500冊 乱闘編 1975―1995』(仮)は必携だね。

最後に。

「いったい何なんだこれはと思いながら読んでくと、本格ミステリ的な解決が義務的に描かれたあとで、それをどんどんひっくり返すようなぐちゃぐちゃのたいへんな展開になり、さらに一番最後でそれまでのすべてを放り出して、後ろ脚で砂をかけてゴミ袋に入れて出しちゃうみたいな(笑)悲惨な結末が用意されているという、そういう話なんですよ。」

この解説を読んで、『眩暈を愛して夢を見よ (新潮ミステリー倶楽部)』を読んだときの興奮を思い出した。

(まだ読んでない本)