中島博美さん写真展&トークショー

夕方、恩田陸の本の表紙を見て好きになった中島博美さんの写真展「そして、深呼吸」トークショーに出かける。写真は、中島さんの友人一同が北海道のニセコにドームハウスを建てていく様子を、ニセコの四季の移り変わりに沿って展示したもの。家をとりまく緑と青がみずみずしくて、深呼吸したら本当に草のいい匂いがしてきそうな写真たちだ。

トークショーは、同じく写真家の小林紀晴さんとの対談。ここで自分だけのハプニング。中島さんの公式サイトの表紙には男の人の写真が掲載されているのだが、私はこの人を中島さんだと信じていて(たまに博美さんっていう男の人いますよね)、ご本人が女性だと知って一瞬混乱する。でも収まってみれば、やっぱりこの人が、私の好きな写真を撮る人。ストレートな人だ。安心する。

ゲストの小林紀晴さんは、『ASIAN JAPANESE―アジアン・ジャパニーズ〈1〉 (新潮文庫)』のシリーズで名前はよく知っているのに、なぜかこれまで一作も読んだことがない。写真より先に本人を知るという珍しいパターン。なんだかとても目力を感じる人。

お二人はいろいろな点でスタイルが違っていて(写真展での配列にどの程度こだわるか、写真集のサンプルを作ることが好きか、旅先ですぐにカメラを構えるかどうか、人を撮ることに抵抗があるか等)、当たり前だけど決まったスタイルというのはないんだな、と思う。

小林さんのニューヨーク生活の話、中島さんの「写真家になりたい」ではなくて「写真を撮りたかった」話。お二人とも全く気取りがない。小林さんは文章も書く人なのだが「人間って、書く必要のないことは、書く必要ないと思うんですよね」という発言が妙に可笑しい。頭で考えるよりも、「そこにいること」の比重が大きい写真を撮る方が楽しいと。

デジタル写真についてどう思うか、という質問に対する回答は「まだデジタルでは求めるクオリティが得られない」(中島)、「枚数をたくさん撮ってしまう割に良い写真ができない」(小林)というシンプルなもの。結局重要なのは、写真でしか/自分にしか表現できないテーマを持っているということで、そのテーマを表現するにふさわしい技術があればそれでいいということなのかな、と聞いていて思った。

「そこにいること」(シカオちゃんのは「ココニイルコト」)と「そこに行くこと」に、そういえばあまり縁がない(考えたこともあまりない)。でも、心地よい肉体的疲労がある種の迷いのなさと結びつくのであれば、ちょっと出かけてみようかな、と思ったのだった。またカメラを持って。夕暮れの風の吹いている風景なんかを撮りに。