オリンピック開会式と『射雕英雄伝』『紅楼夢の殺人』『すべての美人は名探偵である』

5時過ぎに図書館に出かけたら、すでに閉館していた。なんでだろうと思ったら、今日は祝日だったんですね。『射雕英雄伝―金庸武侠小説集 (1) (徳間文庫)』の3巻と4巻を借り出そうと思ってたのに残念。北方水滸伝の1巻が既に到着しているので、その前にこちらの全5巻読み切りたいのだ。『射雕英雄伝』の主人公は、ハンサムでもなく、特に武芸のセンスに恵まれているわけでもなく、実直さだけが取り得のどちらかといえばドンくさい男。しかし、その実直さを愛されて、いろいろな達人が彼に秘術を授け、頭の回転については周囲の美女が補ってくれているというのに色事には疎く、こんなんで本当に英雄になれるのか!というのが2巻までであった。次から次へと繰り出される武芸の秘技にはなんだかご大層なネーミングがなされており、想像するだによくわからん。南宋と蒙古と金の三つ巴の争いは、えーと、結局チンギスハンが天下取りをするんでしたっけね。漢人でありながら運命に翻弄され、蒙古と金それぞれの王家と縁を結んだ二人の義兄弟の行く末は?

天使の涙」から始まって、「インファナル・アフェア」を経た後、やっとジャッキー・チェンの世界へ。全編ドラの音がちょっとやかましい気もするが、この喧騒はあの愛すべき香港の街につながっている。

その『射雕英雄伝』の前に読んだのが、中国つながりということで芦辺拓の『紅楼夢の殺人 (本格ミステリ・マスターズ)』。芦辺拓はばりばりの本格派というイメージがあってこれまで未読だったのだが、1作読んだだけでファンになっちゃった。『紅楼夢*1を下敷きとして描き出される、清朝貴族のお坊ちゃま(賈宝玉)とお嬢様方の夢の園。というとハーレムみたいに聞こえるけれど、お坊ちゃまは「女の子は水でできた清らかなモノ、男なんて泥でできた濁物」(「紅楼夢小事典」)という考えを持つ少女の味方。宝玉に守られた少女たちだけの庭園で立て続けに起こる摩訶不思議な殺人事件。そしてその謎が解かれたまさにその時...。

原作に書かれているのは清朝貴族の栄華と腐敗、没落ということなのだが、そこに少女趣味と殺人事件を織り込んで全く違和感がない。また「探偵」役をも務める宝玉に、貴族の腐敗を目の当たりにした当事者ならではの探偵像を語らせる芸の細かさ。着想から脱稿まで何年もかかったというだけのことはある。南條竹則辻原登と並んで、私の中の中国三傑に認定。

読むつもりはなかったのだけれど、ついふらふらと『すべての美人は名探偵である (カッパノベルス)』を手にとってしまった。徳川家のひみつを巡る殺人事件に、「肩書き?"美人"よ」と答えるよなびじん歴史学者静香が挑む。彼女を「お姉さま」と慕う美人女子大生、静香のライバルのこれまた美人学者、絶世の美人女優などなど、無駄に美人が登場するのだが、まあ、作中で美人コンテストなんかも開催されるし、美女がたくさんってのが伏線だったりもするし。徳川家の謎自体はちょっと強引すぎる気がするけれど、この人の描く女性(と、足蹴にされる男性)の言動には愉快な気持ちになるのだった。高飛車な女性、好きだー。

ほら、「QED」の棚旗奈々ちゃんはお行儀良すぎ、蓮杖那智はあまりに素敵すぎじゃない。たまに息抜きしたくなるのよね。ところで、中途半端な薀蓄たれを評していう「トリビア六分咲き」っていう用語。今度誰かに使ってやろう。

オリンピックの開会式は、結局今日の午後再放送を見た。演出はリック・バーチ氏。個々のパフォーマンスは美しいけれど、全体としてはまあまあ。てんこもりにしただけというか。ヴィーナスの誕生は悪趣味。フェラーリ・マシンと社長*2のルカ・ディ・モンテゼモーロが出てましたね。ロッシがもしドライバーだったら、そのまま乗せていたかも?そう、開会式をいつまでもだらだら見てしまうのは、あの各国コスチュームが楽しいというのもある。今年はフランスはあまり目立たず、むしろ英国がかっこよかったな。スカラ座のロベルト・ボッレが踊る姿に、ちょっと恐怖を感じる。人一人の身体が放つ熱には膨大なものがあって、何万人もの人を動かすことができるということが怖い。平和じゃなきゃ困る。

<追記>
「『トリノ五輪』、フェラーリの演出不発?」http://fmotor.nifty.com/f106/2006/02/post_b293.html

*1:詳しい内容については「紅楼夢小事典」を参照のこと(http://pingshan.parfait.ne.jp/honglou.html)。

*2:フィアット会長でもある。