トリノで日本選手がメダルを取れないまま荒川静香が女子シングルの決勝を迎えたとき、私の頭に思い浮かんだのは、まったく畑違いだけれども『日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫)』6巻(1982年発行旧版)、物部の斎宮である布都姫が、旱魃に臨んで雨乞いを行うシーンだった。
衆人環視の中、美貌の布都姫が雨乞いの儀式を行う姿見ながら、敵対する立場の額田部女王(後の推古女帝)は、心の中でつぶやく。「これは断じてこの女に雨など降らさせてはならない。これほど華々しい登場をして、皆の期待どおり雨が降ったら......この女には強大な力がついてまわる。群衆の心をつかむという強大な力が...」
荒川静香、凱旋帰国。