「アンフェア」最終回

愛と復讐の二者択一を迫られたとき、どうして青年は、決まって復讐を選んでしまうのだろう。安藤一之享年23歳。書いているだけで涙出そう。

いつのまにか、好きになっちゃってたのよね。最初は篠原涼子の添え物くらいにしか思ってなかった瑛太。背が高くてついでに耳も大きくて、だけど仔犬みたいな安藤が雪平に寄り添っているのがあまりに当たり前になって、このまま二人はずっと、一緒に歩いていけるんだと思ってた。

「僕じゃだめですか?」と安藤が問いかけたとき、もし雪平が受け入れてやっていたら。いや、こんな問いには意味がないな。二人が最初に出会ったそのときから、雪平は、彼の肉親にも等しい友人を射殺した「殺人者」だったのだから。対する安藤は、死者に忠実であるあまり、「復讐者」としてしか生きられなかった。相容れない運命の下で出会った二人。ドラマが原作から離れて、雪平夏見自身を標的としたときに、この結末は定まっていたのだ。

ドラマの中で原作の『推理小説 (河出文庫)』と展開がかぶっていたのは、編集者の瀬崎が引き起こした殺人に係る部分である。しかし、人間関係でいくつか変更点があり、例えばお手伝いの牧村さんは登場しなかったし、被害者の一人となった理恵子は、原作では雪平とは全く無関係の人間である。そして何より、安藤一之という青年に、雪平が射殺した少年の影はなかった...。

安藤が一連の連続殺人の黒幕であることは、ドラマでは最初から決まっていたことだという(http://blog.duogate.jp/dramaunfair/)。佐藤嗣麻子の脚本は面白かったし、ドラマの内容にはタッチしなかったという原作者の秦建日子も、ドラマと小説は異なって当然との考えだ(http://hatablog.officeblue.jp/?day=20060316)。それでも、安藤には生きていてほしかったと思わずにいられない。

登場人物の性格が原作とドラマとで異なるのはともかく、死んでしまったら小説の続編でも登場させようがないじゃないか(『インファナル・アフェア』のIIIは、追想と後日譚だったけど)。一作きりの映画ならともかく、ここまで人気を博した?コンビの片割れを、1シーズンで消してしまうとは(くう、使い捨てか安藤!)。

番組の公式ブログを読んだ感じでは、続編の製作もありそうである。続編でも「犯人に愛される刑事、雪平夏見」で行くんだろうか。で、またしても年下と組む?あ、でもそれはちょっと嫌かも。安藤のことを忘れられるまでは。

てな具合に一視聴者が思い入れるくらいだから、安藤の死は無駄ではなかったということなのかな。瑛太、ほんとはどんなやつだか知らないが、視野狭窄なまでに純粋な青年を、よく演じたなあ。これからは「安藤瑛太」と呼んでやろう。