T屋のイブ・サンローランから、フェイシャル・トリートメントのご招待があったので、昨日は夕方から日本橋まで出かけてきた。エステ、マッサージ、ネイルサロン、整体等、体をいじられる場所には全くお金をかけないので(美容院は別)、フェイシャル・トリートメントなんて久しぶりである。4、5年前、松屋銀座でアン・ドゥムルメステールのコートを買った時ラ・プレリーのフェイシャル・トリートメントサービスがついてきて、化粧品の購入と引き換えに、以来2回くらいトリートメントしてもらったかな。しかし、近年の財政縮小とともに高額化粧品は買えなくなり、同時に無料フェイシャル・トリートメントとも縁が切れていたのだった。

大学生の頃から愛用していたランコムの普通のラインが去年あたりから肌に効かなくなり(過酷なサーキット通いが原因か?)、美容液を切らしたまま何ヶ月かあれこれ考えた後に駆け込んだのがサンローランで(松屋には入っていない)、化粧品の使用感は悪くなかったものの、T屋自体にあまり行かないので、「これからは安いネット通販に切り替えようかなあ」と思っていた矢先のご招待である。去年そんなに高い商品を購入したわけではなかったのだが、「今使っている化粧品が合わなくて、切り替えようかと思ってる」くらいは話したのかもしれない。

別館の別室に通されて、まずはトリートメント。なんだかいろいろふんだんに肌にふりかけてもらって、念入りにマッサージしてもらう。これですよ。気持ちいいのよねえ。その時点からすでに眠りかけていたのだが、仕上げにマスクが被せられ、まぶたに濡れたコットンが押し当てられた後は、半分本気で寝てしまった。

目を覚ました後、ついでにメークもしてもらう。髪が半乾きの状態でタオルをかけられたため、頭はぺったんこ兼くしゃくしゃ。おまけに、これ以上は有り得ないすっぴんなので、不細工の範疇を超えている。お肌の状態は...、もちろん悪かろうはずがない。日頃手入れをしていないので、ちょっと人の手が入るとぐんと肌がつやつやになる。それでも私は少しがっかりしたのだった。4年前だかの「トリートメント後」は、もっとぴかぴかだったんだけどなあ(それは間違いなく、トリートメント自体の差ではなくて、私自身の加齢と不摂生が原因である)。

ナチュラル・メークに、派手過ぎない程度のアイラインとシャドウ。他人から施されるメークはいつも濃すぎて変に感じるのだが、上手に作ってくれた。感謝。私がこの日最後の客で、お姉さん方から、お客様用のお菓子のかごから、お菓子をたくさんおみやげにいただく。「なんだったら全部持ち帰っちゃってください」とにこやかに言われたが、「ここで全部持ち帰ってはおばさんの仲間入り」と、ぐっと我慢。

売り場に下りると、昨年接客をしてくださったと思しき方から「前回いらしたのは、夏のレースの後でしたよねえ」と声をかけられる。ほえー、こういう方々の記憶力の良いこと。おまけにとっても美人なのである。ついぽーっとなって、あれもこれも買ってしまった。ということはないのだが、使い終わりそうなアイテムを何点か購入した。通販はしばらくお預けである。「あなた様だけに特別」の威力というべきか。

お金をたくさん使ってお買い物をすると、金券やら無料ご招待やらちょっとしたノベルティといった特典がついてくる。一時期、大量にお買い物をしていた頃、そういうサービスが嬉しいと同時に、「お金を使っても困らない人に限って、さらに無料のサービスが提供されるなんて、なんとなく不公平だなあ」と思ったことである。「なかなかお金を使えない人にたまにこういうサービスが提供されれば、どんなにか嬉しいことだろうに」と。どんなにか嬉しかった休日の夕暮れである。

そういえば昔、カッシーナの新作発表会に友だちを連れていったら(といっても登録さえすれば無料で誰でも入れたはず)、すごく喜んでたなあ。シャンパンと音楽、ゆったりとしたソファ。そんなものに日常的に囲まれて生活している人も、どこかにはいるんだよな。