車の本と雑誌

はしるまがるとまる―もっと楽しいクルマの運転』読了。著者のポール・フレールは、ルマンやF1でも戦ったことがあるというモーター・ジャーナリスト。前半は運転のちょっとしたコツがやさしい言葉で書いてあり、後半になると少し技術的な話が入ってくる。初心者の今読むのが(いつ脱出できるのかわかりませんが)、タイミング的にはちょうどよかったかもしれない。「車庫入れの方法」とかちまちましたノウハウは載っていないけれど、人は車庫入れをするために車に乗るにあらず。やっぱり大切なのは、「走る」ことでしょう。原題は『Making Driving Safer and More Enjoyable』。以下は、私の参考になったこと。

  • オートマチック/右ハンドルを選ぼう。左ハンドルだと有料道路や駐車場の料金所で支払いが不便なだけではなく、片側1車線での追い越しが非常に危険だから。
  • 良いドライバーと悪いドライバーを区別する基準のひとつがブレーキを踏む回数である。
  • ルームミラー→ドアミラー→目視
  • オートマチックでも停車中はニュートラルにしておくと燃料の節約になる。なんらかの故障が起こったときもN。
  • カーブでの加速は、直線区間に向けての出口での加速が重要。
  • 左足ブレーキの勧め(反応が早ければ停止距離も少なくなる)
  • ABS(アンチロックブレーキ)付の車は、とにかくブレーキを踏めばよい。ABSなしの車は、最初はブレーキを踏むけれど、障害物が迫ってくるようであれば、ブレーキをゆるめて避けなくてはならない。
  • 前輪駆動車(FF)の方が、後輪駆動車(FR)より操作しやすい。アンダーステアはアクセルを穏やかに戻すだけ。

そういえば、この間知人の車に乗っていたときにはわからなかった、低速での乗り心地の悪さの原因って、これなんだろうか。違う?

「小さな扁平率(ロープロファイル)はサイドウォールが低くて硬いため、ハンドリングがキビキビとし、接地面積も広いのでグリップも高くなります。けれども、その一方で低速の乗り心地が荒くなり、路面の不整に影響されて、ハンドルがチョロチョロと勝手に取られる傾向があります」

この間知人にも勧められた、左足ブレーキにちょっと引かれるものあり。運転数回の今なら、違和感なく覚えられるかもしれない。ただ、タクシーの運転手さんにちょっと話したら、「左足は踏み込みが弱いんじゃないか」と言ってました。

今月は、時間を見つけてオートマ限定解除の講習を受ける予定。あわよくば、友人のマニュアル車を運転しようという目論見である。私のような普通のドライバーはオートマで十分ともいえるが、多分、マニュアルの講習でも受けない限り、ギアのことなんかずっと体得できないままだと思う。もう一つ、これまでハザードランプというものをつけてみたことがない。チェックしとこう。

『F1グランプリ特集』2006/02月号は、200号記念特集号だった。関係者200人の発言録や、編集部員の書いた記事が結構面白かった。

中嶋悟を筆頭に、日本人F1ドライバー数人のインタビューが掲載されているのだが、私は、中野信治という人を全然知らなかった。こんな優男系が日本にいたとは。山登りが有名な片山右京、「友人になっておしゃべりするならこの人だよね」という評価で、私も友人も一致している。中嶋悟が通算16ポイントしか挙げていないのは意外だった。40ポイントの佐藤琢磨、やっぱり偉いんだね。

ところで、『F1グランプリ特集』には、やたら外国人記者の署名記事が多いのだが、私はこれを、どこか外国の雑誌と提携しているのかと思っていた。でも、そうじゃないんですね。創刊当時、「日本人のスタッフで行こうか」と思っていたところに、わざわざイギリスから、キース・サットンが「専属カメラマンにしてくれ」と売り込みに来たらしい。このことがきっかけで、「執筆陣はジャーナリストも日本人ではなく外国人を起用し、編集スタッフはクルマやレースの編集経験から距離のある人材を集める」方針が打ち出されることになった由。ドラマだなあ。

『F1グランプリ特集』2006/07月号は、FNのデュバルとF3のスーティルのインタビューが面白かった。なんというか、二人とも職業観がシビアだ。二人とも、昨年のユーロF3の年間上位入賞者(スーティル2位、デュバル6位)。これで豊富な持参金(少なくとも1億)があれば、二人とも今年はGP2で乗っていただろう。

「ヨーロッパで走る限りは、モータースポーツでご飯を食べていけるとは思っていなかった。でも、日本で走ればちゃんと報酬をもらえることは知っていた。そういう世界で走るのもいいだろうと思ってきた」(デュバル)

「F1は夢であり、希望であるけれど、現実的に考えるとドライバーにとっては可能性のひとつでしかない。プロとして報酬をもらって走ることが、ドライバーのもう一つの目標。そう考えるとF1にいけなくても、たとえば本山哲などは決して負け犬じゃないでしょ?」(デュバル)

F1直下のカテゴリーに対する評価に関して、二人ともFNを4番目に位置づけている。そのFNでトップドライバーだった井出については、二人とも至極同情的。

「ちょっと驚いた。たしかにFNのレベルを低く見ている人は多いけど、大きな間違いだと僕は思う。でも井出の場合はクルマが遅すぎたし、FNでは限界まで攻められたけどF1ではそれができなかった彼の個人的な問題もあるかもね」(スーティル

「あれは非常に政治的な動きが裏にあったのだろうと思う。彼にはF1に留まれるだけの能力はあった。そして、もし彼がひとつのF1チームでテストドライブの経験をもっと積んでいたならば、今回のような問題に直面することもなかっただろう。ドライバーにとっては過酷すぎ必要以上に低く評価してしまっている。また、彼が日本人でなければあそこまでの事態には至らず、継続も可能であったかもしれない。もちろん、彼が日本人であったからこそチャンスを得て、F1に行けたとも言えるわけだけど」(デュバル)

これまで、外国人の井出評をそういえば読んでいなかったので、そういう受け止められ方なのかなあ、と思う(日本のメディアに対してのコメントかもしれないけれど)。なんとなく、知性と風格を感じる二人。ユーロF3で厳しい戦いをしてきたんだろうな。日本でステップアップのきっかけをつかめるといいな。私の応援する安岡秀徒君、逆に欧州で戦うチャンスがあれば良いのだけれど。