手甲

今回山に初めて持っていって重宝したのは、なんといってもこれ。ワコールのアームカバー(http://www.sakaiya.com/1/index.php?no=r82)。

夏、山に登っている最中は暑い。しかし、半袖のシャツだと陽に焼けるし、蚊にさされるし、二の腕は太いしで、各種用心のためには長袖のアウターを着ざるを得なかった。そんなときに発見したのが、たまたま見ていたテレビの旅行番組で、女性リポーターがノースリーブのシャツに合わせていた、腕にぴったりしたアームカバー。「これだ!」と思って女性用のUVケア用品の棚を探してみたものの、腕まで覆う長い手袋しか見つからず、結局、上記の商品が見つかったのはスポーツ用品店だった。

実際に使用してみると、蒸れないし、軽くてかさばらないし、肌の露出面積を調節するのも簡単だし、ということで、これまで夏でも半そでのシャツは厳禁だったのが、すっかり味をしめてしまいそうだ。冷房対策にもなるしね。

しかし、紺のアームカバーを見るともなく見ていたら、「なんかこのシルエットには見覚えがあるような」という気がしてきた。考えたらなんのことはない、昔の旅人の手甲なのである。お遍路さんや、お祭りで神輿を担ぐ人たちも、そういえば身につけている。和装とは全く無縁なのでうっかりしていた。Yahoo!辞書の「大辞林」の説明は下記の通り。

てっこう[―かふ] 3 【手っ甲】
手の甲を覆うもの。武具は多く革製、旅行・労働用には多く紺の木綿が用いられた。てこう。

日本の忍者は「手甲鉤」というものを用いたそうだ。ポケット付のものには手裏剣を隠したとか。そういえば『お嬢様と私―たなぼた中国恋愛絵巻 (Jets comics)』にも、暗器の一種でそんなようなものが出てきたような。「手甲」でぐぐって見つかるのは、祭り関係のショップが多いが、変わり種もある。

死に装束に手甲をつけるということも初めて知る。全くの偶然だけど、今日借りてきた『空からやってきた魚』をさっきぱらぱらめくっていたら、アーサー・ビナードが葬儀屋から死に装束を借り出してきて試着した、というエッセイが載っていた。もちろん手甲もである。