派遣時代にお世話になったお姉さんからランチのお誘いがあったので、いそいそと手土産を持って出かけていく。去年一年お会いする機会がなかったから、もしかするとこのまま会えないのかな、とも思っていた。少し年上で(年齢は頑として教えてくれない)、正真正銘東京のお嬢様で、おっとりしていて、厳しい。公私とも私とは全く違うまっとうな環境にいるけれども、現在独身である。

待ち合わせはホテル西洋銀座の「アトーレ」のトラットリア。「リストランテの方は予約がいっぱいで取れませんでした。カジュアルな場所になってしまってごめんなさい」というようなメールをいただき、「リストランテや高級フレンチでなくてよかった」と思った私である。

ほぼ2年半ぶりの再会。髪の色が明るい茶色になっていて、ついぞカラーを入れている姿を見たことがなかったので、一瞬とまどう。でも、色が白いのでお似合い。「白髪が目立つようになったから、色を入れたの」とのご挨拶に「そうきたか!」とにやり。「最初に会ったのは9年くらい前よね?」「いいえ、11年前のことですよ」なぞという、会うたびに更新される会話から始まって、近況報告に突入。食前酒のワインで乾杯。

個人事業者に移行した後もかれこれ6年ばかり机をおかせていただいていた当時の派遣先には、花も実もあるキャリアのお姉さんたちがたくさん在籍していて、いずれも英語ぺらぺらだった。フロアを二分していた「趣味はゴルフ」「趣味はバレエ」の二派のうち、今日お会いしたのはバレエ派の方。バレエと映画とクラシック音楽と象徴派の絵画、というラインナップに割り込んで大きな位置を占めているのは、なぜか「サッカー観戦」。ごひいきはACミラン(お気に入りの選手の名前は、何度聞いても覚えられない)。とにかく何でもライブで見る人なので、当然イタリアにも見に行く。サッカーの試合のためなら地球の裏側まで出かけていく行動力は、見習わなくてはである。

こちらもすかさずF1話で対抗。「フェラーリって、確かユベントスのスポンサーでしょう?ユニフォームは黒の縦縞よ。そうなの、車のチームカラーは赤なの」という具合に、お互いわけがわからないなりに会話は楽しく進む。パスタランチのパスタは、たいそう美味というほどではないが、それなりにおいしい。スポーツのジャンルでは、お互いフィギュアスケート好きであることを新たに発見。ヤグディンプルシェンコでは、お互いヤグディン派(関係ないけど『ロード・オブ・ザ・リング』では、私はオーランド・ブルーム派、彼女はヴィゴ・モーテンセン派)。アイスダンスでは、フランスのアニシナ&ペーゼラ組が歴代で一番好きというのも同じ(私は赤毛のアニシナの印象が強いのに対して、彼女は髪をなびかせて滑るペーゼラを絶賛)。彼らを見たさに、彼女は5回もリンクに足を運んだという。「じゃあ、今度リンクに行くときは誘ってください」とお願いしておく。

なんとなく、通常のランチのイメージで、パスタの後はデザートの態勢でいたところ、どーんとメインのチキンが出てきて驚く。「そうだった!今日はメイン付にしたんだった」と二人して今更驚きながら、丸ごとチキンと格闘(ただし小さめ)。

彼女が言うには、これまでおつきあいしてきた友人たち(主に年上)の年齢が上がるにつれ、これまでのように一緒にどこにでも出かけていくということができなくなってきた(相手の方の体力の衰えや高齢の肉親の介護等により)。そんな中で、自分の趣味について誰かと情報交換したくても、全然伝手がない。現在流行っているSNSというサービスを利用すれば、ACミラン戦や自分の好きな選手の情報交換ができたりするのであろうか。とのことであった。普通のウェブ検索では、どうやら情報に限りがあるらしい。

多分SNSというのは、そういう人にこそ打ってつけなのであろうという気がするので、自分はほとんど利用していないmixiにご招待することに。いい結果が出るといいなあ。

デザートとコーヒーで締めくくり、その後は伊東屋八重洲ブックセンターをひやかして、7時過ぎに解散。徹夜でさすがにふらふら。でも、相変わらず戸外も暖かく、楽しい一日だった。祝日なのを忘れていて、図書館の開館時間には間に合わず。明日はおこもりして大掃除と思っていたけれども、結局外に出ることになりそう。