図書館でコピーを取った後、東銀座まで移動して『ブラッド・ダイヤモンド』。もう都内ではここしかやっていなくて、でも、いい加減いろんなところで放映していた後なので、ぎりぎりの時間に駆けつけたところ、「本日お立ち見です」。やっぱり単館上映だとそれなりに人は来るのね。ちょっと迷った後覚悟を決めて入場したら、前方に何席か空席があったので、ありがたく滑り込む。

日曜日のガエル・ガルシア・ベルナルも立て続けだったけど、今日のレオナルド・ディカプリオも、比較的最近『ディパーテッド』で観たばかり。ガエル・ガルシア・ベルナルが二本の映画で全く異なる役柄を演じていたのに対して、ディカプリオは前作のイメージがかぶさる。役柄自体は違っても、ナイーブな内面を持つ男(以下、ネタばれあり)。

舞台は1999年、内戦の続くアフリカ、シエラレオネ。この国の豊富なダイヤモンド資源は、国民を潤すことなく、武装勢力の武器購入と引き換えに、非合法に国外へ持ち去られてゆく。巧妙に隠されてはいるが、その「血まみれのダイヤ」の買い主は、元をたどれば、世界有数のダイヤモンド会社だ。

ディカプリオの役は、政府・反政府軍、ダイヤ商人それぞれにコネを持つ、ローデシア出身の武器商人アーチャー。自身も内戦で両親を虐殺された過去を持つ。傭兵として生き延び、金のためなら誰とでも取引する彼の口癖は「T.I.A.(これがアフリカだ)」。いつか大きなヤマを張って、アフリカを脱出しようともくろむ彼はある日、「とてつもなくでかいダイヤ」の話を聞くことになる。埋蔵場所を知っているのはRUF反政府軍)の囚人として働かされていたソロモン(ジャイモン・フンスー)だ。ソロモンは、アーチャーに心を許さない。しかし、RUFの襲撃でばらばらになった家族の捜索を餌に、アーチャーはソロモンに埋蔵場所までの案内を取り付ける。ダイヤの非合法な取引を暴きたい女性ジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)の援助を得て、ようやくソロモンの家族をケニアの難民キャンプに探し当てたとき、しかしそこに、ソロモンの愛する息子の姿はない。RUFに拉致されたというのだ。

自国民同士、黒人同士で殺しあう悲惨。親元から拉致され、銃を持たされ、薬漬けにされて、「俺は親を捨てた男」と歌いながら銃を乱射する少年兵。地平線の彼方まで広がる難民キャンプ。殺し合うことを望んではいないのに、止まらない殺し合いの連鎖。ぴしっとしたスーツを着て、ダイヤ問題を協議し、あるいは、豪華な建物の奥まった金庫に、ダイヤを保管する男たち。

ダイヤを捌けるのは俺だけだ!と、アーチャーはソロモンに掘り出したダイヤを渡すよう命じる。「Give it to me」という命令は、RUFの指令官が、ダイヤを隠そうとした囚人たちを射殺する前に発した決まり文句だ。追っ手により負傷したアーチャーは、ダイヤを再びソロモンに託す。「横取りするんじゃなかったのか」「一瞬そうしようかと思った」。笑顔で別れる二人。

ブラピの映画は比較的よく観ているのに、ディカプリオのはこれを入れても3本しか観ていない。この差は、馬面のブラピに対して、ディカプーは豚面なので、まあ、もともとの好みから外れるといったところ。変な映画に出たりとか、ホテルで乱痴気騒ぎをやったとか、あまりいい噂を聞かなかったし。それでも、この映画で「この人は信用してもいいかも」と遅ればせながら思った。あの丸い顔、筋肉隆々の体が、どうして薄幸な役にはまるのかは不思議だが。ドイツの血も混じっているというのは初めて知った。ドイツ語も堪能らしい。小難しいドイツ映画に出演するのも見てみたい気が。彼だけでなく、主役三人とも、役に惚れ込んでいることが伝わってくるような演技だった。

アフリカ、内戦、難民、少年兵、引き裂かれた親子、とステレオタイプのイメージが続くけれど、よくできたステレオタイプであれば、ストレートに伝わる。『バベル』よりはこっちがよかった。