frenchballoon2007-06-12


ちょっと時間に余裕があったのでいつもに増してだらだらしていたら、講義を終えた友人から散歩のお誘い。「ちょっと一仕事」+「図書館行き」は後回し。

このところ、夕刻から夜にかけて良い風が吹くので、お散歩は歓迎。でも、必ずロング・バージョンになってしまうのが要注意かな。

帰宅ラッシュの始まった地下鉄に乗って、待ち合わせは根津の駅。一度日暮里から下ったことがあったので、今回は根津から言問通りの阪を上る。なんとかという寺を見学していたら、髪の長い女の人が門をくぐって敷地の中に入ってきたはずなのに、いなくなってしまった。消えたあたりに戻ると、公道だか私道だかわからない細い路地が見えたので、そちらを行ってみることにする。舗装はしてあるが、車の入ってこようもない道幅のせいか、そこそこ大きな木が、当然のように真ん中に居座っている。左手は寺、右手は民家が続く。コンクリートの高い塀にさえぎられて、寺の中まではのぞけない。卒塔婆と背の高い木々が、たまに塀の高さを越えて視界に入る。でも、それ以外に空を切り取る要素はない。広い空。夕暮れの。ポンプ付きの井戸が現れる。現役。私有。紫陽花の花。風が吹いて、木立を渡る風の音がする。車の音なんか、耳をすませても全然聞こえない。かわりに聞こえてきたのは、新内を唄う女の人の声で、私たちより少し若い、つまりそんなに若くもない女の人が、教室の表札のかかる引き戸を開けて入っていった。

佐川急便のお兄さんが通りかかる。お供はよく見かけるワゴン車ではなく、路地でも入っていけるように、幌の付いた荷車だ。初めて見た。「みかどパン」の看板を写真に撮っていたら、犬を連れたおじさんから「どうですか。谷根千散策は」と声をかけられた。「大変結構です」というようなことをむにゃむにゃこたえると、「この辺りは独特ですからね」と嬉しそうであった。「ドロボウこれより先進入禁止」と書かれた看板あり。ひとしきり突っ込む。日本画の屏風がたくさん置かれたアトリエが現れ、作務衣の大変似合う外人さんがPCと向かい合っていた。表にあった展覧会の案内によると、アラン・ウエストさんという方(http://www.allanwest.jp/japanese/saishinyoshida.html)。『草花薫風』展が、6月19日からGellery80にて開催される由(http://www.gallery80.com/)。

路地と寺をそのままの形で残すことで、これだけ居心地のよい空間になる。友人は「いいなあ。こういうところに住みたい」と、羨ましがることしきり。私はそうでもない。目に見える破れの気配がない場所は、休まらない。郊外の荒景は苦手だけれども。都会の水辺が好き。

アジェンダ」(http://www.beau-dessin.com/agenda/yanaka.htm)にちょっと立ち寄って、三崎坂を下り、「Ryu」という洋食屋さんで晩ご飯。美味しかった。ハラペコの人向き。

その後は、上野まで歩いた。夜の不忍池をつっきって、ライトアップされた弁天堂を眺め、上野駅に出る。明正堂で首尾よく目当ての雑誌を入手したまではよかったが、『百鬼夜行抄』の9巻が出ていたのに気づかずに、焦って帰宅してしまった。ネットで注文することにしよう。