"これからもずっと好きでいる"だなんて。

東京湾景吉田修一著、広瀬達郎写真、新潮社装幀室装幀、新潮社、10/2003、ISBN:4104628018

あのドラマの初回があまりにも怖ろしかったのでこわごわ読み始めたけど、出会い系で男女が知り合うこと以外は全くの別物。1ページ目からいつもの吉田修一。でも、いつもよりはストレートな恋愛小説。

まあ、メロドラマに仕立てられてしまうのはわかる。珍しく愛とか恋とか信じるとかそういう言葉がたくさん出てくるから。でも、ベタと暑苦しいのは違うのよ(しかしなぜあそこまで複雑怪奇になるかね)。気取って書いているだけのメロドラマとは何が違うのか、と言われると説明できないんだけど。

暴力と崩壊、そして断絶を描くのが上手な人だと思う。それに対してこの小説では、「愛が消えるのをわかっていても、愛することができるのか」と直截な言葉で問いかける。暴力的な愛の痕跡はある。けれども、"先のことを考えず、...ふたりはもう十分にそのときを愉しんだ。もう、先のことしか、先にはないのだ"とあるように、恋人たちは未来へ足を踏み出そうとする。

吉田修一本来のラインから見ればこちらの方がどう考えても裏バージョンなんだけど、裏の方が明るい(笑)。『ランドマーク』ではかすりもしなかったのに、お台場の高層ビル勤務のホワイトカラー(女)と、海を挟んだ倉庫で働くブルーカラー(男)をくっつけちゃうんだもんなあ。東京湾は泳いで渡れる。

愛する人がいるから、たとえ友だちとしてでも、他の男とは会えない。個人的にはこの部分が一番ぐっと来ました(笑)。

ブラッド・ピットがお忍びで食べにきたもんじゃ http://blog.mtcook.jp/archives/000040.html