眺めのいい部屋

バイト面接第一弾に出かけてきた。採用枠1名に対し応募者11名。控え室のドアを開けると、産科の待合室よろしく壁際の椅子にずらっと並んだ応募者がいっせいにこちらを見た。

会議室なので楕円形のテーブルと椅子が置いてあるのだが、テーブルについているのは二名だけ。あとの方々は、おとなしく壁際の椅子に座っているのであった。本も読まず、携帯も手にせず、じっと待っているのであった。延々二時間待ったのであった。

当方は図々しいので、シグマリオンで検索をしたり『熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き』を読んだりしていたが、内心はおしゃべりしたくてたまらない。やっと最後の二名だけになった時に、堰を切ったように二人でしゃべり出す。その方は、結婚退職を控えているのでパートに移行したいとのこと。とっても感じのよい方だったので、名刺をお渡しする。

8人だか9人だかを同じ時間に呼び出す効率の悪さに、内心どうでもいいや、という気になっていたが、実際に担当者と話してみると、年齢に似合わずさばけた感じで高圧的な様子もない。私が大学を卒業する際、単位が足りなくて泣きついた教授(1週間で500ページ強の著書を読み、原稿用紙20枚のレポートをご自宅に持っていって、やっと「可」をもらった)と大学以来の仲良しだそうで、話は大いに盛り上がったが...。

飲まず喰わずで11人、3時間の面接は大変だっただろうと思い、面接のお礼と一緒に、僭越ながら「お疲れ様でした」と声をかけると、「そんな二度と会えないようなことを言わないでください。またお会いできる確率が」ってところで「お?」と期待するが、そこで黙ってしまわれた(笑)。

もう、二十歳の頃のように「あそこに入れなきゃ明日はない」とは思わない(し思えない)ので、自然体も極まった感じの面接。帰りはそこの近所の有名なお寺に寄って、ほぼ一年ぶりに御朱印をもらう(でもフェルトペンで書いていた。許せん)。小さな弦楽器屋さん発見。中で弾いている中学生くらいの女の子の演奏がかなり上手で、5分ばかり立ち止まって聴く。バイオリンのレンタル3ヵ月1万円は安いような気がするので、バイトが始まったらレッスンを始めて、レッスンが始まったら借りにこよう。