札所参り

一年2ヶ月ぶりに秩父行き。一昨年の10月に(多分行政書士の実務研修が終了する頃)、勉強は嫌だし、仕事は回らないし、ということで秩父札所巡りを始めたのだった(人生煮詰まっていたのね)。

こういう時にだけ発現するA型の血の命ずるままに、札所1番から、忠実に番号通り巡礼する。全て徒歩。「真性A型」人間は、例えば、6番、7番、9番という順番で札所が並んでいるときに、「どうせすぐに来るんだから9番もご朱印をもらっておこう、ということはやらない、絶対に。前回札所6番で終わったから、今回は札所7番から歩くということもやらない。「前回お参りした最後の札所」または、「前の札所から次の札所へと通常歩くであろうルート上で、前回歩いた最終地点」から始めるのである。

昨年の春以降、何かと時間がなくて滞っていた札所巡りだが、友達が「お預けになっていた武甲山登山を決行しよう」というので、一泊二日で秩父へ行くことになった。

当日は寝坊せずに起き、生協の個人宅配の手配もオンラインで済ませ、図書館で本を1冊借りだして準備万端のつもりが、池袋へ向かう途上で、本を1冊しか持ってこなかったことに気づく。2冊目として『老いる準備―介護することされること』を用意していたのだが、行楽の二日間には向かない気がして、『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)』に差し替えようと思ってリュックから出したまま、入れ替えを忘れたのだ。丸の内線で池袋に向かう間、ずっと「何の本を買おうか」と悩みつづける。時間があればリブロに寄ればいいのだけれど、15分でお金を下ろして、特急のチケットと食料を買い求めなくてはならない。結局、西武池袋線の地下改札の中にある本屋で『明日の記憶』とどちらにしようか迷った挙句、パラニュークの『ララバイ (ハヤカワ・ノヴェルズ)』。図書館に届いてるのにねえ。打海文三の『ぼくが愛したゴウスト』も出ているとは聞いたのだが...。でも、あの狭い坪数の店に置いてあったのがすごいと思う。

特急券は結局取れず。羊山公園の芝桜を見に行く大量の観光客を横目で見ながら、札所20番岩野之上堂目指してバスに乗り、秩父橋で降りる。それにしても暑かった。歩きなので、明治と江戸の巡礼古道を歩く。道路はただでさえ車が多く、トラックも多く、連休でさらに多い。猫や犬に声をかけ、牛やポニーに挨拶しながら21番(観音寺)、22番(栄福寺)、23番(音楽寺)と周って24番(法泉寺)で打ち止め。途中で、同じ車種の車が10台近く列をなしているのを見た。何かの車種の「愛車友の会」でツーリングでもあったのだろうか。

18:07分のバスで宿に向かうべく、バス停で浦山方面のバスを待ったのだが、30分以上過ぎても来ない。秩父鉄道バスに問い合わせたところ、「今日は非常に渋滞していて、前のバスも1時間以上遅れてるんですよー。お客さんたちが乗るバスは、まだ始発の駅に到着していません」。と話す目の前で、まさに件のバスが「対向車線を」反対方向に進んでいくのが見えた。

宿の主人に事情を説明し、迎えにきてもらう。宿は「民宿ささら」。当方が人里離れた場所を好むので、武甲山登山と組み合わせるなら、と選んだ宿。浦山ダムの脇を奥に入っていった場所にある。ここは大当たり!調理師免許を持つ奥様が用意なさった山菜の天ぷらとイノシシ汁、美味しい―。鹿の刺身はあっさり。山菜の漬物類も一味違う美味しさ。草の類がこんなにおいしいなんて!お風呂も寝具も清潔だし、(ネットはつながらなかったけど)非常に幸せな気分で眠りについたのだった。

<追記>「栄福寺」では、村?から出征した兵士が全員帰還できたことを喜ぶ碑、「音楽寺」では、秩父困民党の秩父困民党無名戦士の墓碑(「暴徒と呼ばれ暴動と呼ばれることを拒否しない」)が印象に残った。