助教授が天才の呪縛から解放されるのはいつ?

τになるまで待って (講談社ノベルス)
τになるまで待って森博嗣著、カバーデザイン=坂野公一(welle design)、フォントディレクション=紺野慎一(凸版印刷)、ブックデザイン=熊谷博人・釜津典之、講談社、09/2005

『φ』『θ』に続く、Gシリーズ第3巻。超能力者の館に調べものに出向いたC大学生の学生さんたちその他は、例によって殺人事件に巻き込まれてしまう。彼らは「二度と再び玄関を出てくることはなかったのだ」。ではどこから出てきたでしょう?って部分は謎解きでもなんでもなくって、最後は萌絵ちゃんと先生がヘリで颯爽と登場し、殺人事件のHowの部分は5分で解決してしまうのだった。しかし誰が?何のために?ってのは次巻以降に持ち越し。

だんだん、シリーズがパタリロ化してるなあ。平凡に殺人事件が起こりつつ、萌絵ちゃんと犀川助教授の関係は膠着しつつ、狂言回しの愛らしい女子大生は事件の謎よりは彼の謎を解きたい。そういうことどもを淡々と描きつつ(パタリロの場合は騒々しく描いているけれど)、背後には謎の組織がある。

真賀田四季というキャラクターをそもそもの最初から想定してしまった以上、彼女にふさわしいスケールの何かを用意せざるを得ないのは仕方がない。でも、森先生は「巨大ななんとか」向きじゃないような気がする。そのうち宗教を書かなきゃならないんだよ?スケールの小さなものがお似合いだと言っているのでは当然なくて、「飛行機」や「鉄道」「コンクリート」といった、先生が愛情を持っているであろう「物」を通して先生が書くことと、それを読みながら思考が自由になっていく感じが好きなのだ。

真賀田四季に囚われている間、犀川助教授は結局うわの空だし、西之園さんと話すときだけ単語が多くなる海月君。まったく男ってやつは。頑張れ萌絵ちゃん&加部谷!

ところで、件の学生さんたちが館の図書館で当初行うはずだった作業は、資料を1冊ずつ当たって、MNI及真賀田四季に関する情報がないかどうか探すというもの。こういうの、私、得意なんです。バイト料そんなにいらないから、先生方雇って。