「教官と私」十五日目(実車14日目)

2時間睡眠を取っただけで、朝一から教習所。月曜は夜更かしってわかってるんだから(仕事をしていなくても、シカオちゃんを聴いている)、火曜日は午前中空けといた方がいいのはわかってるんだけど、最短で過程が進むようにスケジュールがぎっちり組まれているのであった。

1限目と2限目は学科。2限目がちょうど「人間の能力と運転」という安全運転についての一項目だった。意味もなく徹夜の多い当方が、どの程度の状態なら運転して良いのかは、実は気になっていたところ。その点、教官の個人的な見解によると、危ないのは「テンションが低いとき」だそうだ。あと、太陽を眺めて普段より「まぶしい」と感じるとき。自分に置き換えると、徹夜してようがしてまいが、気が張っているときは大丈夫、「疲れたなあ」と思うようであれば駄目ということか。

この教官の講義は初めてだったが、およそ教官らしいところのない、珍しくひょうげた感じの方。小遣いを増やしてもらいたいので、自家用車をレンタカーに切り替える家庭内運動を行っているものの叶いそうにないとか。なんだか普段のしゃべりが落語みたいだ。和服を着せて「あたしはね」とかって言わせてみたい感じ。

お昼休みをはさんで、3時間実車。ドライブというよりは教習(あたり前か)。ウィンカーの出し方を本格的におさらい。少しずつ、ルームミラーやバックミラーにも目が行くようになる。一番注意を多く受けるのが、ブレーキの踏み方。所内では、とにかく何かあったらブレーキを踏めるように、ということが自分にとっての大原則だったが、路上に出た今、一番起こる確率が高いのは、歩行者をはねることでもなく、対向車にぶつかることでもなく、急ブレーキを踏んで、後ろから追突されること。たまにルームミラーで観察していると、後ろにいた車は、ほどなくいなくなるか、追い越して行くかのどちらかである。やってられないのねー。

最初の教官は、学科でお世話になったことのある、小柄で固太りした方。小さな声であくまでも丁寧な言葉遣いながら、この人が怒ると怖いだろうなあ、と思わせる。トラックやバスの運転手をなさっていたと聞いたけれど、荒れる学校とかにこういう人がいれば生徒は言うこと聞くぞ、きっと。と、塾講時代に中坊に散々なめられた当方は思うのだった。

2限目の先生は、仮免前にあまりいい印象のなかった先生。とはいえ、1時間密室で一緒に過ごすのだから、できれば仲良く過ごしたい。「こういう人に限って車の薀蓄はすごかったりして」と思いついて話を振ってみたけれど、空振りでした。まあいいか。「好みであること」「リラックスできること」「教え方がうまいこと」「運転が上達すること」のそれぞれに、あまり相関性はない。

3限目の先生は、初めて教わる方。お国訛りで一見にこやかで朴訥そうに見える外見の内側が、全く読み取れない。実は、緊張してたり不機嫌だったりするのではないか、あるいは、かなり無関心なんじゃないか。というのはいつもの深読みかな。

最後にもう1コマ学科を受けておく。自動車事故と保険について。保険料、馬鹿にならない。当方のように、自家用車を持たない人向けに「ドライバーズ保険」という保険があるらしいことを知る。保険料が安くて、大体の保障は含まれているが、自分自身の死亡や障害には対応していないとのこと。死亡は、いいや。障害だけはどこか他でまかなわなくては。

眠くてふらふらなところに、友人から夕ご飯のお誘い。浅草の大黒屋でどうしても天丼が食べたい、というので、比較的暖かい夕暮れを、浅草をふらふらして過ごす。帰宅して仕事を片付けた後、今日がお誕生日の友人にメールも送らないままベッドに直行。40歳、おめでとうだよ。(12/11)