F3観戦@岡山(ニ日目)

ぱっちり目を覚ましたらまだ5時。異様にすっきりしているので、そのまま窓辺に移動して『阿部和重対談集』の続き。これからDVDで映画をたくさん見ることになりそうなので、ちょうど良いとっかかりになりそう。保坂和志のしゃべっていることはそんなに切れがあると思えないが、対談自体は、この人とのものが面白い。

家から持ってきたパンとドリンクヨーグルトで朝食を摂りながら、鳥のさえずりをBGMに3時間丸々読書。しかし、カップのインスタント・コーヒーを忘れてきたのは失敗。何せ山の上なので、コンビニにひとっ走りというわけにいかなかったのだ(自販には冷たいのしかなかった)。8時にもう一度家族風呂に入った後、さらに由々しき事態が発覚。アイブロウ・ペンシルがない!

ほとんど顔を作らないとはいえ、当方の素顔はあまりに色がなく造作が平たいため、口紅が落ちれば病人、眉毛ときたらあってなきが如しで、描き加えでもしなけりゃ我ながら大層不気味である。仕方なく、同行の女性からペンシルをお借りしたのは良いが、その方は、美人でしっかり顔を作られるだけあって、ペンシルの色味は、はっきりくっきりの黒と茶。当方のいつも使用している、「適当にごまかして描いてもアラが目立たないぼんやり目のブラウン」とは非常に使い勝手が違う。細心の注意をもって取り組まねばならないのは明らかであったが、まあ、こういうのは、日頃から修練を積んでいなければ、いきなりは無理である。早々にあきらめて黒々とした眉でチェックアウトに降りていったところ、「左右の眉の長さが違う!」「眉がないから、朝食に来れなかったんだって?」等々、容赦ない集中砲火が待っていた。

今日は、梅雨の合間の快晴。チェックアウトした朝の10時の時点で、既に暑い。F3のレースは午後からなので、サーキットまで運転させていただくことになった。昨日から思っていたが、曲がりくねってあまり視界が利かず、一車線しかない狭い道はいかにも運転しづらそう。「制限速度より+10キロ〜20キロ」の間で運転するという自分の中の一つの基準を、どうもクリアできない。ちょっとアクセルを踏み込むと「頑張ってるのに!」と車が主張するし。おまけに、一人で運転しているとき、助手席の荷物をカーブで数え切れないほど投げ落としてきた身としては、連続カーブのたびにひやひやである。「後続車なんか気にするな。のんびり行け」と励ましの声がかかるが、狭い道路で追い越しできないストレスってわかるのよねー。結局、追い越し禁止なのに何台も抜かれちゃった。同行の方々、大丈夫だったかなあ。気持ち悪くならなかったかしら。

緊張して運転している間に、サーキット到着。メインレースがF3とはいえ、絶好の行楽日和を反映してか、そこそこ人は多い。昨日から気になっていたバルーンオブジェのコーナーで、小さな花をもらって腕に巻く。かわいい。

さて、今日はレースが始まる前に、一つ大きなお楽しみがあって、それは、安岡秀徒応援団関西支部の方々とのご対面である。なんと、40名ほどの大人数でもってバスで岡山までいらっしゃるとのこと。我々の方が先に到着したので、メインスタンドで「どの人たちかなあ」と遠目に探していると、やがて現れた真っ赤なTシャツの大軍団。赤の地に、安岡君の名前とカーナンバー37を入れただけのシンプルなデザインだが、これがまた目立つこと。早速場内の放送でも紹介され、ピットウォークの時間には、管理の厳しいトムスが仕切りを解除してピットの中まで招き入れていた。うーむ、関東本部、このままでは乗っ取りの危機か(笑)(http://circuit.toyota-team-toms.com/?eid=481758)。

F3の決勝を待つ間、当方は同行の方とカート乗り場へ。先月鈴鹿でゴーカートに乗ってみたので、今回はステップアップして憧れのカートである。昨日、カートのレースを初めて観戦して思ったのは、これ、オーバーテイクのときの優越感は絶大だろうな、ということ。目と鼻の差、しゃべれば聞こえる距離で脇を抜けていくのである。手袋とヘルメット、ジャケットを借りていざコースへ。体感速度が速い。気持ちいい!路面から何やかにや飛んでくる。なるべくブレーキを踏まないようにと思うと、制御しきれないスピードでコーナーを回らなきゃならないので、ハンドルをたくさん切って、ぐーっと身体が傾く。この感じが楽しい。公道での制約がとっぱらわれて、「私」と「車」と「コース」だけ。こういう感覚、好きだ。

何周か回ってみて、それなりに自分で「ここで大回りしちゃう」とか「ここでいっつも縁石を踏む」とかいうことが認識できるようになる。しかし、認識するだけで直せないんだよなあ。一緒に走った方とレースができればよかったのだが、当方が早々にコースを間違えたせいで、お互い見えない位置で走ることになってしまった。次回からは、先頭でスタートするのは避けよう。次回はどこかでタイム計測だ。

大応援団に見守られての全日本F3第8戦決勝。しかし、安岡君は見せ場を作ることができず、途中リタイア。昨日のクラッシュ以降、車の整備は深夜まで続いたらしいが、部品を取り替えても結局、完全に修理するところまでは至らなかったと後で聞いた。優勝はスーティル。打たれ強くなりましょう。お互い。ナンノコレシキ。

岡山空港に移動して、甘味屋にビールを持ち込んで、とりあえずは「お疲れ様」。毎度のことながら、細胞が入れ替わったように感じる旅の終わり。自分一人だとなかなか入れ替わらない部分が、なぜかきれいに入れ替わる。同行の方々に感謝。また日常に戻る。(06/22)