おー、妻夫木聡健在! この人、悪役もはまるんだよなあ。『砦なき者 [DVD]』で実証済み。なんでこんな時期にこんな豪華な特番なのかよくわかんないけど、テレ朝に感謝。

『天国と地獄』。原作エド・マクベイン(『キングの身代金 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-11)』)。「陽のあたる高台の家」に住む会社重役(佐藤浩市)の息子が誘拐され、3億円の身代金が要求される。ところが、誘拐されたのは実は、重役の運転手を勤める男の息子だった。赤の他人のために、虎の子の事業資金を差し出すか、運転手親子を見殺しにするか。前半の山はここ。3億円と引き換えに運転手の息子は無事に戻ってくる。しかし、重役は会社で失脚する。警察の捜査が進み、事件の共犯の夫妻が死体で発見され、さらに、身代金の受け渡しに使用された鞄の仕掛けから、若いインターンの医師(妻夫木)が主犯として浮かび上がる。

病院の中での、存在感の薄い白衣姿と、私服に着替えて、革ジャンにサングラスで街をふらつく姿の落差。犯人とは知らず、すれ違った元重役から、何気ない風を装って火を借りた後の、邪悪な笑み。麻薬の入手のため、良家の娘を誑かすその危うい視線。そして、死刑が確定した後、元重役との面会を希望し、「僕は死刑なんか怖くないんだ。怖がっていたなんて、あなたに思われるなんて真っ平だ。だから来てもらったんですよ」と薄笑いを浮かべて話す。数分が過ぎた後、かたかたと震えだす手と足。手を押さえても、足を押さえても、いまや発作のような震えは止まらない。それでも彼は、笑みを崩すまいとする。必死の形相で。

堪能いたしました。

毎週の連ドラも、このくらいの密度で作ってほしいよなあ。「この人が? こんな? 俳優(女優)って怖い!」っていう快感を、たまには味わいたい(とか言いながら、最近Gackt君に対してそう思ったばかり)。