雑用で朝から走り回る。歩いていける範囲で目当ての品目が見つからず、化粧もしてないのに、バスで隣町まで行くことに。生憎、バスがいつまで経っても来ないので、バス停で一緒に待っていたちょっと年上の女性に、タクシーでの相乗りを持ちかける。ちょっと驚いた風だったが快く承知してもらい、タクシーに乗り込む。なんだか婀娜っぽいし、水商売の人かなー、と思ったら、生保レディでした。「年末のお客様回りなのよー。もう、腰が痛くって。仕事は楽しいんだけどねー」と、四方山話に花が咲く。「知らない人とタクシーに一緒に乗るなんて初めて。こんなこともあるのねえ!」と、しきりに繰り返していた。まあ、図々しい私でも、誰にでも声をかけるわけではない。女性、できれば30歳以上の仕事してる人、若くてもいいけど、自分の爪のマニキュア以外にも興味を持てる人、いずれにせよ、ぱっと見でこちらを信用してくれる人、みたいなことを、実は一瞬で観察して決めているわけだ。

相乗りで一番すごかったのは、東京入管前で品川駅行きのバスを待っていたとき、中国系の女の子がその場にいた女性4人に次々と声をかけ、あっという間に相乗り集団をまとめ上げたこと。登山口の最寄駅ならそんなこともあるかもしれないが、昼日中の都心では珍しい。光栄なことに私も声をかけていただき、取り決めた何百円だかを支払った。声をかけた女の子の支払いは、他の子よりも少なかったと思う。しかも、ちゃんと領収証を受け取っていた。感銘を受けた。

タクシーの運転手さんは、日本橋までなら800円で行きますよ、と言っていたけれど、道が混んでいて全然動かない。私の方が先に降りるので、半額で400円と取り決めたのだが、絶対800円じゃ行かない。しかし、その生保のお姉さんは、頑として400円以上は受け取ろうとしないのだった。「いつもだったら、カレンダーやら、何か上げる物を持ってるんだけどねえ、今日は何もないのよ」とカバンをごそごそやっていたと思ったら、「そうだ!これがあった」と、携帯のストラップに付けていたアフラックのアヒルを、外して譲ってくださった。「アーフラーック」と鳴くやつ。「会社に帰ればたくさんあるから。まだ付け替えたばかりだから、よかったら使ってやって」。かわいいなあ。嬉しいなあ。

無事に用事を済ませ、午後からはずっと野暮用。これでまた一件、公用が片付いた。その後は図書館で読書。ここに来て、山のように予約した本が届いている。もう一冊読み終えたかったけど、18:30からフィギュアスケート全日本選手権。真央ちゃん見なきゃ。

トップ3で最初に登場したのは安藤美姫。グランプリファイナルの不調が嘘のような上出来の演技。世界選手権のディフェンディング・チャンピオンがかかってますからね。力も入ろうってもんだ。しかし、今夜の一番のお目当てはこの人。太田由希奈。今のところ、全日本でしか見られないからなあ。何がどうという振り付けでなくても、視線を釘付けにする独特の優美さは、健在。ジャンプは、かろうじて。一つや二つのジャンプなんて、この人の個性には関係ない、と言いたいところだけど、トリプルをいくつか跳べなければ、世界がない。この人の滑りを、世界の人たちに見てほしい。日本だけに留めておきたくない、と思わずにおれない。

さて、浅田真央。ようやく、冒頭のトリプル・アクセル成功。いやー、長かった。音楽がジャン=クロード・プティの「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」なんだけれども、真央ちゃんがあまりにもこのプログラムで失敗するもんで、この音楽が流れ始めると軽く欝になるくらい、トラウマと一体化した音楽と化してました。ジャンプを次々と決めてしり上がりに良くなる真央ちゃんの滑りを見ながら「ああ、この曲って、ほんとにセンチメンタルですてき」と、ようやく曲本来の美しさに浸ることができたよ。この歳で、自分との戦いを常につきつけられるってのも大変だなあ。天才の宿命。一つ舞台を踏むごとに、戦いと克服の記録が綴られてゆく。

ってところで、私のお目当ては大体見終わったわけだけれども、この戦いならではの戦いといえば、浅田、安藤に続く世界選手権出場権をめぐる3位争い。ここ数シーズン、中野友加里の対戦相手は、ある意味村主章枝だけだったといってもよい。育つ中野と守る村主。勢いは止められないってとこかなあ。

澤田亜紀ちゃん、好きだけど、もう少しだけダイエットするべきでしょうねえ。目に毒だよ。親元離れて、食生活の管理が大変なのかなあ。頑張れ。注目の新人西野友毬嬢、私はちょっと。いくらジャンプが跳べても、真央ちゃんにはならないと思う。おまけにあのシンちゃんしゃべりにはかーなり違和感が。

10位あたりまでは省かず放映したのは珍しく順当なところとして、17位の浅田舞ちゃんを映したのは、本来の実力者への配慮というよりは、視聴者サービスかなあ。相変わらず美しい女性ではある。真央ちゃんとは、目尻と耳の形が違うのな。オリンパスのコマーシャル、結構好きだ。

えーと、夜の男子フリーも見ましたよ。予想外の出来事はなし。高橋大輔の今期の大躍進は、自分にふさわしいと自分で思えるプログラムを得たことだ。クラシックが主流のフィギュアスケートにヒップホップを持ち込んだこと。誰もやっていないことを自分の名前でやることの高揚。今後、ここまで気に入るプログラムを再び得ることができるか。オリンピックに「トゥーランドット」をもう一度持ち出さざるを得なかった荒川静香のようにならなきゃいいけど。(2008/01/29更新)