惚れた男が「僕は気に入った女の子にはここまでできればいいんだ。それ以上どうこうするつもりはないんだ」と、衆人環視の中でおっしゃるのを、他の子と話しながらぼーっと聞いていました。周りの人は何を言っているのか、よくわかんなかったことでしょう。つまり、私に向けて言っていたわけ。ついでに、自分の知り合いの独身男性を「あいつなんかいいと思うんだが」と勧められるおまけつき。うーん、ふられるために呼び出す手間すら、かけさせてくれなかったか。で、他の女の子の肩を抱いて帰ってしまいましたとさ。そうなのよ、自分が肩を抱かれているときは、他の女性への仕打ちをあれこれを聞かされても、「それは他の女性に対する話よね」と思っちゃうのです。しっかし、もてる男だなあ。万人にもてるとは思えないが、ある種の寂しい女には無敵かも。「わかっててひっかかる」女性が次から次に現れるとは羨ましい限り。まあそういうこととは別に、多少歳を食ってはいるが、多分私が今目にしているのは、彼の全盛期だ。あの「生きていることの愉しみを貪り尽くそう」という姿勢は、出会ったときから変わらない。私が自分の場所を開拓したように、彼は彼で自分の舞台を作った。それに私は加担してきたとも言えるし、まあ肥やしになったとも言える。気持ちの上でも仕事の上でも、自分にメリットがなかったとは言えない。よく見ておきましょう。

と、特に動転することもなくにこやかにその場を乗り切った私ですが(口説かれて落ちた瞬間に相手の体温が下がったことが、手に取るようにわかったから。それでもあきらめきれなかった数か月)、はてこの気持ちをどこに持って行ったことか。あ、違う。わからないのは、「恋愛感情をもてあましているときにどうすればいいのか」だ。恋愛関係以外は「嫌なことは忘れる」と決めていて、結構訓練してきたので、割と忘れる。でも、仕事は、自分が努力すれば新しいチャンスや、再チャレンジの機会もあるけれど、恋愛は「努力すれば」ってのとは違うしなあ。代替物はなかなか降って来ないし。この、生きている肉への執着。忘れるために次を見つけなければ、と焦ってしまうほどの。仕事に関しては「断られてから、嫌な顔をされてからが本番」と時には考えたりもするのに、この件に関してはどうも。

多少体調はよくないけれど、割と仕事をやれそうな感じ。もしかして、相手が気持ちを、まがりなりにも言語化してくれたおかげでしょうか。寂しい、というかわびしい、体の内側が冷えて仕方がない感じだけれども。泣くための熱が足りない。(でも書くのはちょっと楽しい)