余熱

帰京後初めて、実家に電話を入れる。先週日曜日の鈴鹿以来。

鈴鹿に出かける前、「今週末はお昼にF1やるから、見なさいね」と親に念押ししておいたのだが、果たしてちゃんと見たかなー、と思って、キミ優勝の感激冷めやらぬ決勝レース後、「見てた?」と電話してみたところ、返ってきた第一声は「お前の応援している選手は佐藤琢磨なの?」

思わず腰が砕けそうになりつつ、「キミ・ライコネンだって何度も言ってるじゃない。もしかして彼を見てなかったの?」と憤怒と動揺をこらえてさらに尋ねると、「ああ!そうだったよね。凄かったねえ」という返事がやっと返ってきて、親子の断絶はなんとか免れたのだった。

今日改めてハハと話していると、彼女が一番心に残ったのは、表彰後、キミが、自分が口をつけたシャンパンのびんを「大事そうにそーっと表彰台の下のチームの人たちの方に下ろし」、チームの人たちがそのシャンパンを回し飲みしていたことだという。F1を初めて見た人にとっては、ミハエルやフィジケラをアウトから抜いていった力技より、そういったことが心に響くんですな。

「2位の人も、インタビューが紳士的だった」とか言っていたが、紳士的というかなんというか。今季一番悲惨だった2位だよね。しかし、あのときのフィジコとアロンソのさえない表情を見ていると、もうほんと、この1勝は、キミが今季エンジントラブルで失った全ての勝利を補ってあまりある、と思ったね。「後には記録しか残らない。ドライバーズ・タイトル獲得ならずという記録の前で、キミは今年何勝しようが沈黙するしかない」と、私自身、レースの前は思ってました。けれど、アロンソにとってあの鈴鹿は、「年間チャンピオン」という美酒を味わうに際して、喉の奥にささった小骨になるだろう。だって、レースなんかそれまで全然見たことのなかった有象無象まで含めて、誰もが知ってしまったのだもの。誰が「特別」なのか。

と思うとねえ。たまらなく爽快。

本屋で「F1速報」と「AUTOSPORT」*1を立ち読み。「ライコネン」+「ポスター」でここ数日何件もアクセスがあるというのに、ポスターを付録でつけようって雑誌はまだないのかな?観客数15万人+視聴率10.3パーセントのうち、あのレースで「ライコネン」という名前を覚え、初めてF1雑誌を手にする人たちがいるはずなのだ。ファンのひいき目じゃないと信じているんだけど*2

*1:安岡秀徒君も出てましたね。

*2:それでも、F1を見ている絶対数は全然少ない。東京の雑踏に戻ってくると、急に落差を感じる。