「教官と私」十四日目(実技13日目)

1時過ぎに教習所に電話して、仮免の学科の合否を尋ねる。ちょっとだけ待たされた後「おめでとうございます。合格です」。落ちるような気はしていなかったけど、問題に慣れるまで模試7回分も費やしちゃった。マークシート対応力、落ちてるなあ。仮免許証が発行される4時前に教習所に入り、今後のスケジュールを組んでもらう。

路上第1回目の担当は、いつぞやのハムサンド欠食児童青年。初回ということでまずはボンネットを開けてみたりするが、特に何を動かすわけでもなし。教官の運転で路上を走りながら「仮免の試験どうでした?」と尋ねられたので、「後半ハンドルふらふらでした」と答えると「それ、困るから」と一言。わー、相変わらずだわー、と思うそばから顔がへらへらしてしまうのは、教官がハンサムだからなのか、路上に出られるからなのか。多分、両方。

運転を交代して、路上。夕暮れ。夕闇に赤く点るテールランプがきれい。できることなら、いつもこの時間に乗れるといいのに。道路は少し混み気味。それでもほぼ50kmで走れる。加速するのは楽しい。前の車に合わせて減速したり曲がってみたり。「先生、所内で運転するよりずっと楽な気がするんですけど」と聞いてみると「障害物がないから!視界が開けているから自然と目線が遠くに行くし、ちまちま走らなくていいから、一つ一つの動作に余裕ができるでしょう」って、いつの間にか機嫌が直っている。

大通りから車のいない直線のわき道にそれて、加速しながら坂を駆け上がったら深々と満ち足りた気持ちになった。思うままに走ったら、こんな気持ちになるんじゃないか、と想像していた通り。「60km超えてるよー」と注意する先生の声も、所内でハンドルを矯正していた時とは別人のようだ。

「流れにはうまく乗れてます。っていうか乗りすぎ。前の車に合わせて制限速度超えちゃだめ。安全な速度にすぐに落とせる速さで走らなきゃ」。復習項目はなし。やったー。

2限目の先生も、割と最初の頃にお世話になった先生。私のハンドルの拙さを身を持って覚えてらっしゃるのか、ちょくちょくハンドルを横から押さえている。大丈夫なんだけどな。さっきの授業で信号待ちの間、すぐ前の車が同じ教習所のものだとかなり長い間気づかなくて「えっ。今頃気づいたんだ」と呆れられたので、いろいろ見るつもりでバックミラーで後ろの車の人の顔を確認したり、前のベンツのウィンカーの点滅が妙に早いのを指摘してみたりしたところ、「そんなことはどうでもいいから、運転に関係のあるところだけ注意して」と先生はお困りの様子。この先生は大変まじめで、ちょっと外したことを申し上げると「どう対処したものやら」と悩まれるのがよくわかるので、つい。

やっぱり問題は、ブレーキ。自分で好きにブレーキを踏めば、前の車に対してはそれでいいかもしれないが、後ろの車は迷惑する。本当に必要なとき以外、踏んじゃいけないんだな。そして、確認。先生が横についていなければ、私の目しか残らない。その怖さを、わかっているようで、本当にはわかっていない。

所内に戻ったとき、先生から「戻るとほっとしない?」と聞かれる。「いえ、特には」と答えると、「僕はほっとしたよ」と心底お疲れの様子。わー、ごめんなさい。でも、こちらも復習項目なし。

15時限目までは、基本的に、どんどん次に進むらしい。学科を1コマ受けて、スーパーで20%オフの惣菜をたくさん買いこんで帰る。でも明日も早いんだっけ。