京都二日目

今日も同じ部屋に滞在できるので、のんびり9時に起床*1。買っておいたコーヒーで目覚まし。朝のニュースに大雪の東京が映っているのが不思議な感じだ。雪の京都に降り立つはずが、どうやら雪を逃れての移動になったらしい。起床早々、母が「スカーフを失くした」と訴える。昨日ホテルのレセプション会場では必ず持っていた由。忘れ物の問い合わせをするのにスカーフの特徴を尋ねたところ、「イタリア製の」だそうだ。いや、それじゃわかんないって。母の描く絵は抽象の油絵で、構成にはたいそう気を遣っている。なのに絵以外のことになると混沌もいいところだ。「白地に模様が描いてある」ということをやっとのことで聞き出してオークラと展覧会の主催者に電話をかけてみたが、見当たらないとのこと。母はがっかり。こちらは「なんでスカーフをあんな何枚も持って歩くんだよ。大体、いったんホテルにチェックインさせたのに、レセプション会場になんであんなにいろいろ抱えてきてたんだろう。そういえば、パーティの後クロークの札が見つからなくて、荷物を(3つも)ひっくり返してたな」なんてことを芋づる式に思い出しながら朝から不機嫌。明らかに、彼女の整理下手が自分に引き継がれていることが自覚されて二乗。旅行に慣れている分、旅先では自分の方がましではあるが。

今日は11時に母の友人と京都文化博物館で待ち合わせということなので、10時過ぎから近辺をお散歩。記念すべき京都のご朱印第一号*2は、西国十八番札所「六角堂」。聖徳太子を開基として創建されたといい、太子のファンとしてはちょっと嬉しい。庶民的な雰囲気の境内。たっぷりと墨を含んだおおらかな筆跡に「関西に来たんだなあ」という感慨が。関東でももちろん寺社はあるしご朱印もいただけるけれど、「お参りする」文化の根付き方はやっぱり関西には敵わないと思う。

11時に母の絵が展示されている京都文化博物館へ。大阪からいらした母の友人と合流。スカーフ見つかる。「先生のものではないかと思いまして」と担当者が差し出したスカーフの色は、見間違えようもなく「黒い」。あきれて物も言えない。母の絵は、相変わらず周囲の絵からは桁違いの箍の外れ方で、相変わらず楽しそうだ。そして、同じ会場の出品者の絵は相変わらず概ね退屈。単なる風景画、単なる人物画って、何のために描かれるんだろう。展示して人に見せることが前提なのに、技術の高い低いはともかく、伝わるものも希薄で。もっといいレベルの展覧会に出そうよ、母。といいながら、家族はいつも自分のことに手一杯で、やれ「どこかの国の評論家が先生の絵をお気に入りで」と甘い言葉で自称「芸術家」をたらし込む美術関係者の前になすすべがない。

まあ、母のように「何がどうあっても描きたい」人にとって、情報の多寡は多分あまり重要なことではない。どんな機会からであっても何かを得る人だから。「絵のためにお前たちの結婚資金を使い込んでしまった」とこの間懺悔していたが(笑)、我々兄妹が(長いことかかって)大学を出るまで、自分の洋服一枚買わなかった人だからな。もらい物の帝王だし。一人で旅行一つできないのは、旦那の稼ぎでは家計を支える以外の支出が長いこと許されなかったからだ。

母の友人は、昔神戸でのレセプションで知り合った方で、大阪在住の染色が専門の方。何年か前に奈良でもお会いしており、今回が三度目の再会。彼女だったら弘法さんも一緒に楽しめるかな、と思っていたら、昨冬転んで足を痛めているそう。残念。東洞院通りをだらだら南下してランチの場所を探す。東京者はつい町屋風の作りに目が行くのだが、「SECOND HOUSE」も「サンタ・マリア・ノヴェッラ・ティサネリーア」も一杯で入れない。四条通りを右折したところで、何やら長いアプローチの奥にレストランらしきものが...。やっと落ち着いた先は「KICHIRI KARASUMA」。お昼のピークは終ったらしく、天井の高い落ち着いた空間に通される。一安心。ランチはそこそこ凝っている割に1,200円?から。味も美味しかった(!マークはつかないけど)。サービスはとってもよかったなあ。組み合わせを迷っていたら、一つ上のコースからパスタを選ばせてくれたり、何かと気を遣っていただきました。母の友人から、お手製のコサージュ付き腕リングとハンカチをいただく。すてき。

食後は京都芸術センターに移動して、友人の友人が出品しているという「CRIA展」。日本画、洋画、彫刻、工芸とジャンルは様々だったが、安心して見られる。友人の友人の方のろうけつ染めは、大きなサイズにきっちりとした構成が感じられて気持ちがいい。あと、蜂を偏愛しているらしい方の木工は楽しかったなあ。槍を弾頭に乗っけて発射台で出発を待つ蜂の作品名は「片道切符」。元は小学校だったという芸術センターには工房やらカフェやら図書室が配されており、校庭ではテニスに興じる人がいたりして若者でにぎわっていた。

帰りは友人を送って、錦市場を通って四条京阪まで。友人は「京都には用事があってよく来るけど、用事以外で歩き回ることはあまりないんよ」とのことで、錦でたくさんお買い物をなさってました。なんだか京都は、市場一つとっても優雅だなあ。アメ横とは全然違うわ。

駅でお見送りをした時点ですでに5時。疲れた様子の母に無理を言って、ちょっと八坂神社まで足を延ばす。二つ目のご朱印入手。暗いせいかも知れないけれど、ちょっと怖い感じ。夕食には少し早いということで、ホテルに帰って一休み。

雪が降らなくても寒いことは寒いので、今日はあれこれ悩まず近くの新風館。ここにはオープンした年に一度来たから、つまり前回京都に来たのは2001年だったのね。当時は大賑わいだったけど。貸切等で選択肢がなく、「萬力屋」というラーメン屋さんに入って、スープと土鍋ごはん。母が今度は、ご飯が固くて噛めないという。母が入れ歯を入れたのは去年のことで、話は聞いていたけれど、現実に食べられないものがあるということを知って動揺する。にしても、それなら最初に言ってよ。段取り系は壊滅である。

ホテルでシグマリオンに接続する気力がなく、ホテルのネットコーナーに下りていくつもりが、先週見損ねた「氷壁」を見たりしていたら面倒になってしまった。山登りしたい。『犬はどこだ』が佳境に入っているので、母が起きてしまいおしゃべりをしたがるのを生返事でごまかしつつ、ひたすら読書。3時頃?読了。(01/25)

*1:本来ならこの日は六地蔵のホテルまで移動して宿泊する予定だった。

*2:ご朱印集めを始めたのは2002年で、以後京都を訪れるのは今回が初めてである。