右の目と右の側頭部が痛むので、一日ベッド。よく考えたら、目をつむっていても英語のリスニングは可能なことに気付いたので、読書兼疲れたら目を閉じてリスニングの繰り返し。

頭痛をだましだましなので、心が休まるものということで、買い置きの『εに誓って (講談社ノベルス)』に看病してもらう。このシリーズとしては久しぶりに、きちんとした起承転結感があった。一文字あたりのインクの重さがどれくらいかわからないけれど、比重が若干高い感じ。相変わらず登場人物の会話が変。特に「お姉さんのために買った本」のくだりで爆笑。こういう深刻な状況において、一番の懸案事項がこういうこと、というのは実際ありそうな気がする。一方で真賀田四季の陰謀も着々進行中。相変わらず絶妙のミックス。

英語も一応、着々進行中。ただし、実用的なことに時間を費やす時間を1とすると、残りの9を非実用的な作業で埋めないとアタマが保たないので、にわかに国産小説月間に突入。17日以降の読了以下の通り。

幸福ロケット』。山本幸久にハズレなし。今回のかっちょいいお姉さんは、主人公の担任の鎌倉先生。「元モデルで美人でちょっと怖い」ジャガーオーナー。

インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)』『インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)』。主人公はフリーライター兼ホストクラブのオーナー(女性)。主人公も著者も年の頃同じくらいなので、風俗の見方に似通ったものを感じて楽しい。「情報としてのホストクラブ」に対する興味はきっちり満たしつつ、清潔感を失わないところがいいと思う。ネタがワンパターンにならないのも、丁寧なお仕事ぶりがうかがえる。そして、ホストの憂夜と空也のかっこいいこと。現実はこうはいかんでしょう。

鬼に捧げる夜想曲』。終戦後、孤島、旧家と美女、伝承と惨劇。京極もどきを、「書こうと思ったら書けちゃった」みたいな19歳(当時)。だけど、せっかくの京極風味なのに、榎木津はドコ?京極堂は?という不満は残る。まあ、今後もどんどん書いてください。2作目要チェック。魅力的な主人公を作れるようならついていきます。

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)』。この人の描く男とは、ほんと相性悪くって。そして、この人の描く性的な場面は、いつも唐突で気持ち悪い。抜き書きはビジネス系の言葉だったりして。「これはと思う人間には思い切って金を出し、機会を与える」とか「法律というのは要するにだな、地上界の事象を図るもんだ」とか。それでも、この本は気になっていて。ちらほら別の本に登場するから。面白く、ないわけじゃ、ないんだが。そして、どうしてこの人はこんなに人気があるのか私には不明。「亜流」と言われる人たちは結構好きだったりもして。

昨日この世界で』。『独学魔法ノート』が後を引いて。『独学〜』がヤングアダルトだったのに対し、こちらは大人向け。でも、書いてあることは似ている(笑)。『ねじまき鳥』及び『アムネジア』とこれは、きっとそのうち、記憶の中で混ざってしまう。なんしか境界の話。説明はできないが、この人が考えることと書くことには興味がある。よくわからない間は読み続けるはず。

老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))』。面白かったけれど本来の好みから外れる。テッド・チャンを、去年読んだかどうか思い出せない。

深淵のガランス』。久しぶりの北森鴻。この人は、「職人」が主人公であれば、どんなジャンルであっても書けるのでは。今回は「花師」兼「絵画修復師」の話。あざやかな着地点。そう、「トリックのための」どんでん返しなんかじゃなくて、登場人物の人生を丸ごと抱え上げての宙返り。満腹。フェルメールの贋作を描いたファン・メーヘレンという人について、単独の伝記は見当たらないようだ(日本語では)。「そう生きるしかなかった」人に、いつも心ひかれる。