全日本フィギュア選手権女子シングルフリー

チャルダッシュ

浅田真央の涙とガッツポーズに、思わずもらい泣き。去年の全日本選手権のときの、あのあっけらかんとした笑顔は、もう二度と戻ってこないのね。追い立てられるように大人になった真央ちゃん。でも、その成長があったからこそ、一試合ごとに彼女のファンになっていった一年だった。

スポーツ選手のファンになるとき、最初に注目するのは、才能か容姿かのどちらかである場合がほとんどだ。しかし、それだけではファンにはならない。最後の一押しをするのはその性格的な魅力で、「負けず嫌い」なのは当然として、16歳にして意識して感情を制御していることが窺えるそのプライドと美学に、すぐに泣いてごまかす私は、いたく心を惹かれたのだった。その彼女の涙、まさに値段のつけようがない。

いや、すぐ泣く織田信成君を責めているわけじゃないんですよ。いいじゃないですか、漢らしい女子と、すぐ泣く男子。どちらも丸ごと好きだ(笑)。

たった一日で、一気にファンを増やしたらしい太田由希奈。彼女の名前で飛んできた人の多さに驚いた。フリーではさすがにジャンプが少し見劣りしたけれど、地方大会では全然跳べてなかったということなので、日増しに勘を取り戻しつつあるということなのだろう。浅田舞の、触れなば落ちんという風情も魅力的だが、2シーズン越しに見る太田由希奈には、貴族のような格調の高さがある。どうか無理をせず、願わくば次のオリンピックまでたどり着いてほしい。

冒頭の画像は、真央ちゃんが今回使用している「ノクターン」と「チャルダッシュ」を収めたアルバム(http://www.toshiba-emi.co.jp/st/compi/figure/)。改めて考えると、ノクターンはピアノだけ、チャールダーシュはピアノとバイオリンの二重奏と、どちらもシンプルな楽器構成なんだな、ということに気づく。ラフマニノフチャイコフスキーメンデルスゾーンのシンフォニーは、大音量で揺さぶりをかけるだけにプログラムも盛り上がりやすい。しかし、真央ちゃんの滑りは、音楽と非常に合っているけれど、音楽に埋没しないだけの、滑り自体の強さがある。そのことが如実にわかる良いプログラムに恵まれたんだな、と改めて思った。