静岡から糸魚川まで(3日目その2)

15時。素直に高速に乗って帰ると、18時台には八王子に到着してしまう。帰りの目的地としてちょっと考えていたのは、長野ICそばにある「象山地下壕」。あと、「雨の中のドライブでもここはおすすめだよ」と、タクシーの運転手さんから勧められたことのある「麦草峠」近辺。「象山地下壕」はちょっと間に合いそうにないとして、「麦草峠」は夕暮れまでにたどり着けば楽しめるので、カーナビの目的地は東京、経由地を麦草峠に設定して走り始める。

ところが、延々と来た道を折り返して、今朝給油した豊科の辺りに来ると「高速に入れ」の指示。「えー、こんなところから高速に? 東京に行っちゃうじゃん」と確認すると、やっぱりカーナビの悲しさで、茅野まで高速で行って、麦草峠まで上って、同じルートで茅野に戻ってくる、という設定なのだった。そういうのを人間は「経由」とは言わないんだけどなあ。時刻はまだ17:00過ぎ。素直に帰るには早すぎる。時間は遅くなってもいいから、高速に乗る距離を少しでも浮かせたいのよ。麦草峠はもういいから、せめて、一つ先の松本から高速に乗ることにしよう、とふらふらしていたら、またしても工事中の道に入り込んでしまった。どこかで突破できれば、とずるずる奥に進んだら、誰もいないコンクリの作業場みたいなところで行き止まり。休日なのか、ダンプはたくさん並んでいたけれど、人の姿無し。黒猫が暇そうにこちらを見ていた。

18時過ぎに、松本ICから長野自動車道入り。塩尻の辺りだけ、土砂降りの雨が降った。暗くなってからは視界が不安なので、日が暮れるまでと時間を区切って、飛ばす。遅い車と速い車がはっきりしていて、しかも固まっているので走りやすい。快調に山梨に入ったところで、またしてもカーナビが不思議なことを言い出す。この辺りで下りろというのだ。「?!」に思いつつも、「じゃあ下道を入れってことかな」と半信半疑で料金所を出る。と、「...キロ先高速入り口です」と、理解を絶する新たな託宣が。頭の中は疑問符でいっぱいである。それとは別に「さっきからどうやら後部の窓が一つだけ開いていてうるさい。閉めなきゃ」、ということを考えていた。それは憶えている。気づいたら、右側のガードレールが迫っていた。体に衝撃はないものの、嫌な音が走った。がっくり。あまりに不面目で。

「カーナビの誤導(とそれに伴う平静さの喪失)」「緊張した走行の後」。私のパターンはここにあるのだ。せいぜい15キロで。人も車もいなくて。

高速に戻る気もしなくて、下道を通って帰る。甲府あたりでちょっと渋滞したけど、連休の帰りに通ったときに比べると、全くといっていいほど渋滞はなかった。ただし、連休のときにはいなかった遅いトラックが2台で延々と道を塞ぎ続け、結局八王子まで一緒だった。八王子着は21時過ぎ。

案外駅の側にはガソリンスタンドがなく、ちょっと大回りして給油。29.6l@139で4,114円。コンビニに寄ってお金を下ろして車に戻ったら、ハンドルが動かず。「これは何?」と多少パニクってレンタカー会社に電話をしたら「ハンドルロックですね。キーを差し込みながらハンドルを回してみてください」と言われて指示通りにしてみたら、無事動いた。次から次に、知らないことが。

レンタカー会社に車を戻して、傷をチェックしてもらい、事故報告書を2件書いて、4万円支払う。高い授業料。まあ、何かに関わるというのは、そんなものだけど。「今後、車を借りられなくなったりするのでしょうか」と恐る恐る尋ねると、「貸さないということはありませんが、今後も事故が続くようなら、免責補償に入れなくなります。なので、事故1件あたり最低7万円ということになりますね」とのことだった。「これまで、レンタカーで事故を起こしたことは?」と逆にしつこく聞かれる。それはまあそうかも。

長い時間を平穏に走るドライブ体力は、まだまだ不足してるってことなんだろうなあ。今回、実際の体力もちょっと不足気味だったし。やっぱり鍛えなきゃだなあ。カーナビは、細かく設定をし直すこと。車を運転し始めたら、なるべく早い時間に一回どこかで停めて、操作を一通り確認すること。ラジオは、市街地を離れたら切ってしまうこと。クーラーをつけるか、窓を開けるかは、早めに判断して、走行中操作ボタンに触れずにすむようにすること。自家用車の人にとってはなんでもないような慣れた操作が、今の私には結構負担だから。

まあ、頑張って慣れよう。これまで、歩きと公共交通機関では足を伸ばせなかった遠く深い場所が、私を待っているので。

今回のドライブ代。レンタカー関係15,000円+40,000円で55,000円(ひええ)。ガソリン代9,304円。高速代3,000円+2,600円で5,600円。ホテル代5,800円+6,200円で12,000円。なんやかんやで9万近く。本来なら5万だったところだなあ。痛い。次のドライブは9月までお預けかな。あ、お店の人によると、走行距離は870キロくらいだったとのことだった。

多少自信をなくして、旅の後には珍しく、怖いものが増えてしまった。でも、無茶をせずには生きていけない。この感覚を、多少は仕事に持ち込みたい。予定調和を揺さぶるには、予期できないことが手っ取り早い。でも、この程度では、自分の脳と肉体を日常で実際に動かすのは大変なんだけど。

まあそれでも、雨の太平洋と晴れた日本海は、いまでもそこそこリアルに感じられる。なんとはなしに、走っていただけで楽しかった感覚も。それでいいじゃないか、という感じではある。