香港・マカオ旅行四日目

frenchballoon2007-12-03


目が覚めて、充電していたPHSだかiPodだかの時刻を見て泡を食う。9:00前にはエアポート・エクスプレスに乗ってなきゃいけないのに、もう8: 30を過ぎている。7:00にアラームをセットしといたのに1時間以上も寝過ごしたのか。うわ、これは遅刻だ。JALに電話しなきゃ。と電話をかけてみるものの「営業時間内におかけ直しください」のアナウンスが流れるのみ。「もう8:00過ぎてるのにどうして?」と回らない頭でしばらく考えた挙句、やっと時差があることに思い至る。日本から持ち込んだ機器は、1時間早いのだ。香港の現地時間は、まだ7:40である。結局30分くらい寝過ごしたわけだ。

安心してだらだらし、8:00過ぎにJALに電話入れ直し。東京で確認したときは、マイレージ対応の成田行き午前便、午後便のうち、午前のほうは満席だが、午後便はまだ余裕があるとのことだった。できるなら午後便に変更したい。しかし、電話で確認してもらうと、もう午後便も、マイレージ用の席は埋まっているという。午前便で帰るしかなさそうだ。「もう帰らなきゃいけないのかー」と、なんとなく納得いかない感じ。「明朝の午前便なら空きがありますが」と言ってもらうが、さすがに今日中に帰国してないのはまずいんだよなあ。だらだらしていたら、チェックアウト予定時刻の8:30を過ぎてしまった。あら、出発1時間前までにチェックインできないかも? で、もう一度JALに電話。「遅れそうです」「最悪**分前までにはおいでください」。

チェックアウトする人多数。フロントの顔なじみのお姉さんは、朝もいたってのんびり。時間がないのでタクシーをつかまえようとするが、ホテルの隣のマンションの係員の人が、空車を片っ端から呼び止めて敷地に引き入れてしまう。やっと1台つかまえてみると、こちらの言うことに首をふるばかり。今度は反対側にわたってもう1台呼び止めるが、英語がわからない風でもないのに、「話にならないよ」というような表情。日本のタクシーの運転手がこういう顔をするのは、近すぎるか混んでいるか、とにかくまあ、気が乗らないときである。

結局、Hillside Escalator脇の階段を文字通り駆け下りることになってしまった。歩いても20分しかかからないんだから、最初から歩けばよかったんだよな。ifcの地下にエスカレータで降りて見回してみると、なぜかエアポート・エクスプレスの入り口がない。階を間違えたらしい。移動して、運よくホームに停まっていた電車にすべりこんだつもりが、出発まで5分ほど待たされる。空港に着いたら着いたで、JALのカウンターがどこにあるのかわからない。我ながら、こんなに何もかもわかっていないとは不思議なほどだ。もともと遅刻する方ではあるが、走りに走ってそれでも全然間に合わないというほどの読み違いは年に1度あるかないか。私の遅刻は、ほぼ正確に5分から15分の間である。

案の定チェックインは間に合わず、正規の航空券を買える身分ではないので、平身低頭してチケットを切り替える手配をお願いする(こういうときに英語を使わずにすむってのが日本の航空会社のありがたさ)。係の女性2人がとても親切で、午後便の空いていたチケットを回してくださった。忝い。「まだ時間が早いので搭乗ゲートは決まっていませんが、だいたいこのあたりです。2:50には搭乗ゲートにいてくださいね」とやさしく説明を受けて解放される。

ここで、空港に留まって免税店でも見てればよかったんだよなあ。しかし、私は今回、まだスターフェリーに乗っていない。あれに乗らなきゃ、香港に来た感じがしないのだ(昨日乗っとけよ)。

とりあえず、近いほうの荷物置き場に荷物を預け(1個50ドル)、mixであまり美味しくないジュースを飲み(お腹壊したらどうしよう、という不思議な味)、初日に購入したMTRのトラベラーズ・カードには、1日分のMTRの乗り放題(区間限定)が含まれているので、エアポート・エクスプレスで青衣まで出て、普通のMTRに乗り換え、香港まで。数時間前に猛スピードで駆け下りたifcをのんびり通り抜けて、スターフェリーの乗り場へ。3年前は地上にあった乗り場が、小奇麗な高架からのアクセスに変わっている。これはこれで悪くないけど(だって景色は依然美しいから)、風情は減ったなあ。

2等1.7ドル。この(待ち時間含めて)15分の船旅は、30円もしないのだ。コイン1枚で可能な、世界一安くて贅沢な旅。GX100で写真を取りまくり(揺れる船内でしつこくピントにこだわるとフリーズする)、こちらは昔の雰囲気のままの尖沙咀側の乗り場に到着。満足。海港城の中にマンダリナ・ダックを扱っている店があるというのをネットで見てちょっとだけ探してみるも、オンリーショップじゃないのでわからない。今回、もしできることなら、現在日本で扱いのないニコル・ファリとマンダリナ・ダックを探しに行くつもりだった。でも、それどころじゃなかったなあ。私が香港でおろしたキャッシュは、聞いて驚け1300ドル(2万円くらい)だけ。しかもまだ200ドル残っている。どこにでもATMあるし、ホテルをはじめとして、カードが使える場所はカードで払えばいいわけだし。交通費と食費は、日本国内旅行のほうがよほど高くつく。北欧以外は、ヨーロッパですらそんな感じだったなあ。しかし、基本的に街歩きしかしないとはいえ、今回の倹約ぶりは目を見張るものがあったな。

マンダリナ・ダックは国内でも輸入業者がいそうだけど(エースのOEM生産品には興味なし)、問題はニコル・ファリだよ。2000年だかに東京スタイルが提携を打ち切って以来、仕方なくスーツはヨーガンレールとアニエスベーだけど、本当はニコル・ファリが一番好きなのだ。ロンドンまで行かなきゃ買えないのかなあ。

今回、まるで山登りの人のような格好をしているせいか(ファイナルホーム・マウンテンハードウェア・アークテリクス・aravon)、中国人と間違えられる率異様に高し。しかも日を追って増えた。店員さんも、まずは中国語で話しかけ、その後英語に切り替える。かと思えば、すれ違いざまに「ヤーパン、ヤーパン」と繰り返す人もいる。広東語では「ヤップン」と言う、とネットでは書いてあるのだが、私の耳にはヤーパンとしか聞こえなかった。店員さん同士が「この人、日本人よ(だから中国語は通じないわよ)」みたいな状況の時にもそう言っていたと思うので間違いないと思うのだが。広東語がわかれば、「実はわかるんだぜー」とびっくりさせられるのになあ。ちなみに、香港ではもう冬のバーゲンが始まっていて、海港城では既に、海外ブランドが40%オフだったりしました。

関係ないけれど、前回夏に香港に来たとき、めちゃめちゃ日差しが強いのに、誰も帽子をかぶっていなかった。私が日焼け予防に大きなつばのついた帽子をかぶっていたら、かなりじろじろと見られた。日本人の店員さんに尋ねてみたら、「つばのある帽子はむしろ忌避の対象で、でも理由は知らない」とのことで、以来不思議に思っていた。帰国してたまたま『裸の街ニューヨーク―ウィージー自伝』を読んでいたら、「ロンドンでは共産主義者以外帽子をかぶらない」という記述があって、もしやこれかと思ったり。香港は「赤い中国」から亡命してきた人たちの街だから、あり得るような気がする。

アンディ・ラウの新作のポスターがあちこちに。13日から。残念。日本と同じように、きっと、12月の半ばくらいから年末用映画が封切られ、香港も華やかな冬の気配が街に満ちるのだ(香港でもマカオでも、クリスマスのイルミネーションを飾り付けている真っ最中だった)。今回は一度日程を変更したので、年内はこの週末しかマイレージのチケットは取れなかったけど、来年あたりは、早々と年末にかかるようにチケット押さえたいなあ(しかし、ホテル代はさぞかし高いだろうな。マカオGPはどうしよう)。

前回宿泊した「Kowloon Hotel」のあたりをちょっとのぞいて、「尖沙咀」から再びMTRへ。行きに使ったルートより若干遠回りになるけど、まあいいか。と思ったけど、あまりよくなかった。「九龍」までちょっと歩いて、エアポート・エクスプレスに乗ればよかった。と後悔しても後の祭り。

荷物を引き上げ、JALのゲートは確か反対側だよなあと思いながら、近くの出国ゲートをくぐったところで、わかっていたはずの出国審査の大行列。周りの日本人は、ほとんどがANAの乗客である。這う這うの体で審査を済ませたところでもう15:00。わかっていたはずなのに! 搭乗ゲートは、たぶん空港の反対の端。その辺りの案内のおじさんに念のため道を聞くと、「50ドル持ってるか?」と聞かれる。なんのことかわからないまま「持っている」と答えると、問答無用で、どこからか現れた屋内自動車に放り込まれる。どうやらエリア内タクシーらしい。4人乗り。運転手はおばさん、後ろに大荷物のおじさん一人。急いでいるからこそのはずの自動車だが、運転は大変のろい。真正面から車が来るのに、避けようともしない歩行者にもいらいらさせられる。体力さえあれば、走ったほうが早いくらい。「急いでいる人用」というよりは、もしかして「荷物の多い人用」なのかも。

ゲートが近づいたところで更に車を乗り換え、今度はびゅーんと飛ばして、やっと搭乗ゲートに到着。「ああ!やっと来てくれた」と歓びと非難の声が同時に上がる。間の悪いことに、そこに待っていたのはなんと、今朝チケットを手配してくれた親切なお姉さんである。もちろん、非難のこもった目でこちらをご覧になっている。あああ、面目ない。

小さくなって機内に入る。通路側にしときゃよかった。食前酒の時間にまたしても思わずホットコーヒーを頼んでしまい(取り消そうとしたときには、すでにCAのお姉さんは走り去っていた)、なおさら小さくなる。国内でご朱印集めばかりしている間に、すっかり田舎者になってしまった。ってことで、旅の余韻にひたる余裕はなかった。帰ってから、香港国際空港が、今年の「Airport of the year」のランキング1位に選ばれていることを知る(http://www.worldairportawards.com/Awards_2007/Airport2007.htm)。サンローランの化粧品を補充し損ねたなあ。いつもこんなだから、税関のおじさんに一瞥ももらわぬまま入国することになるのだ(学生さんがたに至るまで、みんな税関申告用紙を書いているのな。みんなおかねもちだ)。

日本は雨。覚悟していたほどには寒くない。隣に座っていた国籍不明の老婦人方は、これからタヒチに行くのだとおっしゃっていた。ハンサムでお金持ちの華僑と知り合うのは難しそうだが、老婦人方とは仲良くなれるかもしれない。小間使いあるいはおそば仕えとして。

こうやって成田に降り立つと、初めて思うことではないが、日本の表玄関という華やかさが決定的に欠けていると思わずにおれない。それはたぶん、この、開口部が少なく壁ばかりの設計のせいだ。こういうところこそ、金がかかっても、ガラスをふんだんに使ってよ、と思う。レンゾ・ピアノがデザインした関空は、先ほどの「Airport of the year」の8位に堂々ランクインしている。

PHSの電源を入れると、「留守電が5件入っています」。こんなことじゃないかとは思ってました。(12/17更新)