frenchballoon2008-06-09


早起きする予定だったが、じぇんじぇん起きられなかった。8時前に起床して、朝のコーヒーはあきらめ、結局9時にチェックアウト。体調は悪くない。薄日が射す中に細かい雨が降っている。午後は雨と雷の予報。そういえば、サーキットから帰る途中に、雷除けの神社があったなあ。

近所の建部ヨーグルト(http://www.takebeyouguruto.com/)に寄って、朝ごはん代わりのヨーグルトを食べた後、国道484号を今日は西へ。東京暮らしが長くなった後で免許を取ったせいか、「国道」というと4車線道路を無意識に思い浮かべてしまうのだが、地方に行くと、1車線しかなくてすれ違うのも難しそうな「国道」が平気で現れる。この484号も森の中の1車線道路。対向車も後続車もいない。薄い雨で空気はしっとり。誰に自慢できるわけでもないけど、贅沢してる感じ。

そんな中を快調に飛ばす。前回熊本で運転したときに、ハンドルの持ち手がおかしいと、同乗者からさんざんけなされたので、今回のドライブでは、ハンドル操作を練習することにする。これまで、カーブにさしかかると、早くハンドルを回せるように、持ち手をハンドルの上部に移動する癖がついていたのを、取りあえず基本に戻って、10時2時の位置に両手を固定する。しばらくその状態で走っていて、驚愕の事実を発見。なんと私は、左に曲がるときは右手で、右に曲がるときは左手で、ハンドルを押して曲がっていたのでした。我ながら不思議すぎる。まあ、正確には分析できないけれど、多分性格の通りで「曲がれないことを怖がるあまりの備えすぎ」で「何に備えているかわからなくなっちゃった」状態なんだろう。

ってことで、左に曲がるときは左手だけで、右に曲がるときは右手だけでハンドルを切ってみる。片手だけでも結構深く切れるものだ。今まで随分、可動域を狭く取ってたんだなあ。この間もてぎでカートを運転したときの感覚が、何気に役に立つ。普通に乗用車に乗っている分には、車を本気で「制御しなくちゃならない」場面はほとんどない。たかがお遊びでも、タイムトライアルでハンドリングとブレーキングのプチ限界状況を体験するのは、実はかなり効果的なんじゃないか。とはいえ、肘が体に寄り過ぎるとさすがに運転しにくいので、その場合は、もう片方の手でサポートする。たぶんこれが正常型? 心なしか、ハンドルを元に戻すときの車の挙動も、片手の時のほうがスムーズな気がする。なんだか短時間でハンドリングがスムーズになったので、楽しい。車を運転する諸々の状況が、じゃなくて、運転自体を楽しんだのは、この日が一番かも。60キロを落とさず曲がれるようになっただけで、随分上手になったような気が(笑)。極端な速度変化がないから、助手席から物も落ちないし。

吉備中央町で、吉川八幡宮にお参り。立派な本殿に驚く(http://www.optic.or.jp/kibichuo/data/ED006/ED006.html)。加茂総社宮(http://www.optic.or.jp/kibichuo/data/AE002/AE002.html)にも行きたかったが、役場の人がいまいち要領を得なくて教育委員会に回してもらったものの、「はて?あれのことかなあ。住所?電話番号?人いませんよ」てな調子で察しが悪かったのであきらめた。まあ、どうしても行きたかったわけでなし。でも、地元のことなんだから、もっと薦めましょうよ。

吉備中央町を抜けて高梁市街地に降りる地点が唯一難所で、かなりの高低差を、らせん状に廻りながら下らされる。後ろの大型車がぴったり車間を詰めてプレッシャーをかけるので、手に汗握りながらの急降下だった。それでも50キロは出てなかったと思うけど。

高梁市からは、おそらく県道302号〜県道85号を経て吹屋方面へ。レースで来ない限りわざわざ企画することはない岡山旅行とはいえ、行きたい場所のストックは思いの他たくさんあるのだった。まずは、寺社仏閣系で吉備津神社吉備津彦神社、最上稲荷。陶器の備前牛窓方面。アート系で岡山県立美術館と直島。それから、ベンガラで栄えた吹屋。全部回ろうと思ったら、最低3泊4日は必要な行程である。寺社めぐりはいつでもできそうであるし、備前と直島はもっと余裕のあるときに来たいので、今回は吹屋を選ぶことにしたのだった。

例によって一車線道路のわき道を織り交ぜながら、11時半すぎに「広兼邸」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E5%85%BC%E9%82%B8)到着。たかだか片田舎の庄屋屋敷でしょー、と思っていると、度肝を抜かれる。実際上がってみると、規模はそんなにものすごくはないのだが、高台にあって、敷地の横幅と同じだけの長さでもって張り巡らされた石垣が、下から仰ぎ見る庶民を威嚇するに絶大な効果をあげているのだった。現在ののどかな田園風景を上から眺めていると、本当に「過去の栄光が偲ばれる」。印象に残ったのは、ものものしい楼門(門番小屋と不寝番部屋付き)と、長屋の裏手の水くみ場。前者は、富を蓄積した庄屋というのは、ここまで厳重な警戒が必要だったのか、と若干奇異な感じがする。これが当時の標準だったのかなあ。水くみ場は、いまだに涼やかな水が山から?流れ落ちていて、一見して「ここがこの屋敷の神様のいる場所だな」とわかる。神様といえば、お屋敷専用の神社が、邸の敷地の正面、敷地を出ていったん下ったあと、もう一度丘を上ったあたりに見える。朝な夕なに遥拝したのだろう。足を伸ばしてみればよかったかな。この屋敷、八つ墓村のロケ地として有名で、邸内にもポスターが張ってあった。今度ちゃんと見てみよう。邸全体の写真は、この方のサイトが充実しているのでご紹介。

吹屋は、銅山と硫化鉄鉱を加工して製造したベンガラで栄えたところなので、町全体が、ベンガラを中心としたテーマパークになっている(http://www1.ocn.ne.jp/~nariwa/fukiya1.html)。鉱物イメージ好きの私には楽しい場所だ。広兼邸で購入した「広兼邸」「笹畝坑道」「ベンガラ館」「旧片山邸」「郷土館」周遊券800円を手に、吹屋ふるさと村方面に戻る。「笹畝坑道」の手前の「金精神社」でちょっと寄り道。まあ名前が名前なのでそういう神社だろうとは思いましたが、巨大な女体の木像(顔無し)が並べて置かれていたのには驚いた。しかしなあ、ここで祈る事柄が何もないよ。

「ベンガラ館」でベンガラの製造工程をお勉強した後は、おなかがすいたので、ふるさと村の中心街へ。「ラフォーレ吹屋」にちょっと寄ってみたところ、「レトロモダン」の造りながらあまりはりぼてっぽい感じはなく、各種施設完備のこういうところに泊るのも悪くはないかも、と思った。その敷地の隣に、実は明治期の木造建築としては有名だという「吹屋小学校」が。いまだに現役である。今日は月曜なので、中で学ぶ生徒の声が外まで響いていた。古くて風情がある、という以上に、すみずみまで美しく整備されている様子に、使用者の保存の意思が伝わってきた。こちらも、個人のサイトをご紹介。

ぐるっと回りこんで「山神社」にお参りした後、「ベンガラ屋」でお勧めの柚餅子を購入。「藤森食堂」はお休みで、「いろり」で昼食。このあたりのうどんやそばは、一杯500円が相場らしい。素朴な味だった。骨董屋さんのような店内の写真を何枚か撮らせてもらった。

ちょっと道順は前後したけれど、「笹畝坑道」へ。吹屋銅山は足尾、別子に並ぶ3大銅山を形成していた時期もあるといい、坑道に入れるのは嬉しい限り。しかし、たまたま私が行ったときには私一人しか観光客がおらず、入ってみたらとっても怖かった。独特な生命感があるし、地下とかって、念がそのままとどまりそうだし。それでも分岐を全部踏破して、地上に出る。銅山発見のきっかけになったという露頭も残っていた。

再び中心街に戻って、「吹屋国際交流ヴィラ」「吹屋郵便局」をのぞいた後、旧片山家住宅、郷土館を見学。昔のガラスを透してゆがんで見える赤い町並み、瓦や壁が、ここにしかない眺めを生み出す。この地に生まれ育った人たちは、例えば倉敷の白い土壁を見てなんと思っただろう。旧片山家住宅で一等面白かったのは、しかしベンガラとは関係ない、今は亡き主人の書棚だった。ガラスの書棚に蔵書がそのまま入っていて、哲学辞典や歴史辞典と並んで、小栗虫太郎の「有尾人」とか当時の小説が並んでいるのが面白くて、つい見入ってしまった。他人の本棚というのは、時代を超えて覗き見趣味をかきたてるものらしい。

さあこれで、吹屋の主だった観光名所は全て踏破。こんなに「観光」するのは、自分としては珍しい。かなり満足して吹屋を後にする。少し離れた場所に「吉岡銅山跡」と「西江家住宅」があったが、疲れ気味なのでパス。もう二度と来れないかもしれないけど。行きとは異なる県道33号線〜313号線を通って高梁方面へ。途中「黒鳥ダム」が現れたのでちょっと途中下車。「鉱山跡」と「ダム」を一日で見られるなんていい日だなあ。「細川護煕展」は見なくていーや、と成羽町美術館をスルーしちゃって、後から安藤忠雄設計だと知り、ちょっと後悔。しかし、美術館のHPに、安藤の「あ」の字くらいしか載せていないのは、集客のためにはもったいないかも。

結局、雨が降っていたのはこの日、この成羽町付近だけだった。またしても国道484号に戻って岡山空港を目指す。5時には空港近辺に着く。飛行機は7時発。空港のガソリンスタンドは高いとレンタカー屋さんに教わっていたので、近辺にガソリンスタンドを探しに行ったら、行けども行けどもなくて「最上稲荷2キロ」の地点まで出てしまった。結局30分よけいにドライブして空港のガソリンスタンドへ。クレジットカードは使えず、21.4リッター3,766円也を支払う。リッターあたり176円ってことかな。「思ったより燃料代は安かったなー」と安心。それもそのはず、後でメーターを確認したら、2日で281キロしか走ってないんだもん。道理で疲れないはずだ。ちなみに新型デミオの燃費は13.13キロ。カタログ燃費と比べると大幅に落ちるけど、下道だったし、山だったし、冷房かけてたし、とか言い訳してみる。

5時半すぎにレンタカーを返却。無事故返車につき、500円の割引券をもらった。またしても時間が大幅に余ったので(今回はそういう流れか)、岡山空港ターミナルビルの展望レストランで夕食(ままかり寿司付きうどん)。出発は多少遅れて、8時半前に羽田到着。充実した旅ではあった。が、この後のしわ寄せを考えると高くついた。まるまる1ヶ月レースはお休み。せいぜい肌を休めよう。