7時半から上野でビラ撒き。3日間の修行もこの日が最終である。寒いし、雨は降り始めたし、早朝で人はいないし、ではあったが、前日の渋谷に比べると、人間がよほど人間らしいので、やり易い。屋根のあるところでのんびり配っていると、「東大行きのバスに乗りたいんだけど」と英語で話しかけてくる青年が一人。本郷方面ならこっちのほうだろう、と当たりをつけて松坂屋方向のバス停まで行ってみるも見つからず、JRの駅員に尋ねると「浅草口のほうだ」と言われ、そちらに引き返しても、目当てのバスがない。雨の中連れまわるのが申し訳なくてちょっと話してみると、台湾の学生さんで、何やら物理のカンファレンスがあるのだとか。メガネ。理系。優秀な学生。これは大事にしなくっちゃ。結局やってきたバスの運転手さんに尋ねて、「本郷だったら、不忍池の前がバス停ですね」と教えてもらって、雨に濡れながらバス停まで。「とっても感謝してます。写真撮っていいですか」というので携帯で撮ってもらって、「メールで送りますよ」というのでメルアドも教えといた。来月は台湾旅行だし、またちょっと縁ができた感じだ。

30分抜けたせいか、ビラ撒き終了は10時前。そのまま浅草駅に、昨日地下鉄で忘れた傘を取りにゆき、次の目的地に向かうため、新宿へ。「ニュートップス」の2階に陣取り、客がいないのをいいことにPCと本を広げ、携帯電話で某相談に答える。で、見込み客の男性の言うことには「あなたの知っているもっとベテランの人を紹介してくれませんか?」 失礼かつ笑える話だ。しかし、双方にとって正しい判断である。第一印象で私を信用できないと思う人にとっては、確かに私は信用できない。私を信用する人は、多分利害とは別の観点で信用している。逆も同じ。ま、その方にも某所にも、義務と義理は果たした。

2時から知人のオーボエのコンサートがあるので、聖蹟桜ヶ丘まで京王線で移動。ちょっと時間があるので、旧武蔵一の宮「小野神社」にお参りする。現在の一の宮である大宮の氷川神社に比べると、ほんとうにこじんまり。七五三の一族が一組いるだけ。社務所も閉まっている。個人的には、多摩川と丘に取り巻かれた地形が気になった。

2時からのコンサートは、木管楽器定期演奏会で、フルート、オーボエクラリネットファゴットの重奏を聴く。先生のフルートだけが別格で、指のよく動くクラリネットの人もいたけれども、素人の方々の木管は、意図せず無骨で平板な音になりがち。繊細なニュアンスを出すには一苦労と見た。素人の演奏を聴いてこそ、プロの技がわかるとも言える。それでも、指揮者なしで息を合わせて曲を演奏できるんだからすごい。えっちらおっちらのガーシュインも楽しかったな。

4時過ぎに大急ぎで府中に移動。今日の三番目の目的地は、武蔵総社大国魂神社。本殿が北面しているというのを読んでから気になっていた神社だ(西風隆介はもう書かないのか)。四時半を過ぎるともう日が暮れて、初めて降り立つ府中駅の改札を出ると、年季の入ったケヤキ並木の参道と、立ち並ぶ店と、人込みと車と。門前町とは全然違うのに、下手な門前町以上に、神社の存在感が大きい。暗闇にまぎれて、何かが充満している感じが。ケヤキと神社の森と、面積はたいしたことがないだろうに、この「森と木々」の気配。境内の長い参道は、ランプを灯した夜店が並び、お参りから帰る人たちで混み合っていた。本殿に手を合わせ、久しぶりにご朱印をいただいて帰った。

今日はまだこれで用事が終わらず、笹塚手前で人身事故で停車、かろうじて笹塚までは運行してくれた京王線から都営新宿線有楽町線を乗り継いで銀座。2年ぶりだかで大学の後輩から連絡があって食事。個人的に木挽町界隈がちょっと気になっているので、ちょっとそのあたりを見て歩き、客が立て続けに入っていくのにつられて「オステリア・オロ」へ。久しぶりに会う後輩なので、そろそろ結婚の報告か何かかなあ、と思って「彼女どうしてる?」と尋ねると、「あ、そういえば、別れたんですよね」「いつ!?」「えーと、先月、だったかな?」。道理で暇になったはずだ。かわいいというか情けないというか。昔のように豪勢にご馳走してあげることはできないが、と思いつつ、酒が入るとなんだか財布のことはどうでもよくなってきて、前菜2皿、パスタ2皿。ワインやらグラッパやら3杯ずつにチーズ。一番美味しかったのはチーズだったか。車関係の広告代理店にいるので、F1の話とかもほどほどに。「結婚する相手が仕事を続けたいというのは全然構わないけど、家庭を一番大切な場所だと思っていてほしい」とかって言ってた。この子が10代の頃からアルバイトしてもらっていたので、全く気兼ねなし。ノンストップでしゃべりっぱなしの4時間だった。1万2千てのは思ったより安かったが、CPは微妙。私が一番ご馳走した男の子たち2名が、いつまでも片付かないのはちょっと気になるところだ。とか思いつつ、帰ってきた。一日の無事を不動尊に感謝して帰宅。